「よそ者」力(下) 地域おこし協力隊10年 自己実現通し地域貢献

西日本新聞 九州+ 大坪 拓也

 春はサクラやツツジ、初夏はアジサイ、秋は紅葉。脊振山地の南にある高取山公園(佐賀県神埼市)は豊かな自然を楽しめる。シイタケなど地元農産物の直売所もある。

 「地元に腰を据え、新しい目線で良い所を伸ばしてくれる人がいれば…」。公園支配人の飯盛潜(ひそむ)さん(72)の表情はさえない。最盛期に年間約8万人だった来園者は半減。干し柿作り体験などのイベントで集客を図るが、直売所の売り上げも低迷する。

 市がテコ入れのため導入を目指したのが、地域おこし協力隊だった。集客イベントの企画や福岡都市圏への情報発信をしてもらおうと考えた。しかし、応募は3年間で1人だけ。採用には至らなかった。

 佐賀県全体の隊員数(2018年度)は34人で、九州7県の平均122人を下回る。県は本年度、他県で隊員として活動し、ノウハウを知る経験者らを正職員として採用。市町に効果的な募集方法も助言する。県の担当者は「人材獲得競争は激しい。出遅れたが、巻き返したい」

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 全国で最も多い43人の隊員が昨年度活動した大分県竹田市。JR豊後竹田駅から徒歩1分ほど。江戸期の武家屋敷が並ぶ市街地にある宿泊施設「たけた駅前ホステル cue」を経営する堀場貴雄さん(39)とさくらさん(40)夫妻は元隊員だ。

 2人はゲストハウスを営む夢があり、14年に千葉県から赴任した。当初は「よそ者に何ができる」という住民の冷ややかな声も耳に入ったが、酒を酌み交わして距離を縮めていった。

 人口約2万1500人。人口減少に歯止めがかからない。市は10年度に移住専門部署を設置するなど移住・定住は重点施策の一つ。隊員には地域のにぎわいづくりの担い手としての期待もある。古民家を改装し、17年春に開業したゲストハウスは国内外から年間、約2500人が宿泊。交流人口の確保につながっている。「隊員を支える行政の情熱も力になった」。堀場さんは振り返る。

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 竹田市は、堀場さん夫妻が隊員として採用された14年度から募集を本格化。東京や大阪でも面接する。近年は20代~60代の隊員がやりたい仕事や活動のゴールなどを書いた「協力隊カルテ」を作成。隊員の目的と、役割に食い違いが出ないよう、年4回面談を重ね、任期後の生活をイメージしてもらう。市OBは定住支援員として隊員の相談に乗り、地域住民を紹介する。

 3年間の任期を全うした隊員の定住率は7割以上。30代が中心だ。就農したり、芸術活動をしつつ建設会社で働いたり、地域おこしに関わり続けたり。地域に溶け込んだ“よそ者”の姿が市内各地でみられる。

 堀場さんは言う。「自分に合う場所をきちんと探し、人脈を築き、自己実現の道筋を立てる。肩肘張らず、結果的に地元の良さを引き出す存在になれればいいと思う」 (大坪拓也)

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