「よそ者」力(中) 地域おこし協力隊10年 後絶たないミスマッチ

西日本新聞 九州+ 前田 倫之

 「農作業の研修をやってもらうから」。宮崎県内の地域おこし協力隊の40代女性は4月の着任早々、役場担当者からこう告げられ、思わず言葉を返した。「それは私の仕事ではないと思いますが」

 福岡市で土木設計の仕事に携わり、里山の保全活動に従事。「生態系の保全が地域振興につながるモデルをつくりたい」と会社を辞め、協力隊に応募した。昨年秋の面接。手つかずの自然が残る公営キャンプ場を拠点にハーブ農園の開設や農産物のブランド化、カフェ運営などのビジョンを語った。任期3年の計画と必要な予算を記した企画書も提案。「ぜひやってほしい」。歓迎された、はずだった。

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 配属先は役場の仕切られた一室。農作業や道の駅の手伝いの依頼が次々舞い込んだ。断り続けると「前任者は来てくれたのに」と柿農家から嫌みを言われた。「地域、役場が望むのは“何でも屋”。隊員はただの人員補填(ほてん)だった」。募集要項の業務概要は「地域コミュニティーの活性化」と曖昧。そこに落とし穴があったと今は思う。

 用意された住居は築数十年の木造アパート。室内は窓枠からしみ込んだ雨の影響でカビが生え、下水の悪臭も漂う。5月から車で片道1時間超のキャンプ場で働く。隊員には年最大200万円の活動費が認められ、ハーブ農園の開設に必要な経費の支出を役場に求めたが、「急に言われても予算はない」と職員はにべもない。

 上司に何かを相談すると、翌日には庁内に筒抜けになる環境も苦痛だ。ストレスから体調不良になり病院通いの日々。給料は月16万円。生活は苦しく、悩みを共有できる隊員もいない。

 「私がいる場所ではないのかな」。孤立感を深めていた今月上旬。住民たちと腹を割って話し、こう明かされた。「よそ者に土地や家を貸したくない。手伝いに来てもらわないと困るから、表だって言わないだけだ」

 任期は2年半近く残るが、知識、経験を発揮できる新天地への移住を考えている。また地域おこし協力隊に手を挙げるかどうかは、仕事内容と、住民の思いを見極めてから決めようと、心から思う。

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 思い描いた仕事と違った、生活環境が合わない…。ミスマッチは後を絶たず、起業や就職を理由に辞めるケースもある。

 隊員を支援する動きも出てきた。鹿児島県では、隊員やOB、行政の有志が参加する支援組織が7月に発足。隊員や自治体職員からの相談に応じている。

 3月には熊本県荒尾・玉名地域の2市4町の隊員有志によるグループが生まれた。隊員12人が互いの特産品などを勉強した上で、合同イベントなどで地域全体の魅力をPR。月数回は顔を合わせ、バーベキューなどで交流を図る。南関町の隊員で発起人の森本和臣さん(46)は語る。「隊員は縁もゆかりもない土地に飛び込む。同じ苦しみが分かる仲間が近くにいたら、離職はきっと防げるはずだ」 (前田倫之)

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