再審、フェアなルールで 中島 邦之

西日本新聞 オピニオン面

 ラグビーワールドカップが開催中の10月。日弁連の人権擁護大会(徳島市)で聞いた例え話に膝を打った。

 「ラグビーの試合で、審判が誰なのかが最大の関心事になることはまずない。しかし弁護団は、担当裁判長が替わるたびに、今度はどんな人なのかに最大の関心を持つ。これはとても奇妙な話だ」

 発言者は石側亮太弁護士(京都弁護士会)。滋賀県で1984年、酒店店主が殺害され、金庫が盗まれた日野町事件の再審弁護団メンバーである。無期懲役が確定した阪原弘・元受刑者の再審開始決定を昨年夏に勝ち取った。

 突破口は、証拠リストの開示だった。これを参考に弁護団が個別の証拠開示を求める中で、阪原元受刑者が金庫の発見場所に捜査員を案内できたとする実況見分調書の写真が虚偽だったことが判明。金庫を捨てた場所という、犯人しか知り得ない有罪の根拠が大きく揺らいだ。

 一般に、捜査機関が集めた証拠のうち、裁判所に提出されるのは有罪方向の証拠だ。被告が犯人であることと矛盾する「無罪方向の証拠」は捜査機関に眠ったままになる。この隠された証拠が、布川事件や東京電力女性社員殺人事件などを再審無罪に導いた。

 だが証拠の開示は、通常審の一部では法制化されたが、再審請求審は対象外。弁護団が開示を求めても、裁判所が検察側に開示を勧告するかどうかは、裁判所のさじ加減次第という現状がある。

 積極的な訴訟指揮で日野町事件のリスト開示を促した、元大津地裁裁判長の安原浩氏も日弁連大会に出席。証拠開示に法的規定のない現行制度では「再審格差が非常に生じやすい。やる気のない裁判官は(開示勧告を)全くやらなくても済む」と指摘した。

 逮捕から31年。いったん再審開始決定が出た日野町事件は、検察の不服申し立てを受け現在、大阪高裁で審理中だ。この間、阪原元受刑者は2011年に病死した。

 日弁連大会では、再審法の速やかな改正を求める決議が採択された。再審請求審での証拠開示の制度化と、再審開始決定に対する検察官の不服申し立て禁止を柱に据えた。九州弁護士会連合会も10月25日に同趣旨の決議をした。

 石側弁護士は強調する。「われわれが持つ再審制度は、冗談みたいにアンフェア。この事実を社会に知らせたい」。これは決して難解な話ではない。冤罪(えんざい)から無実の人を救済するための再審手続きが、スポーツ並みの公平公正なルールの下で進められるべきなのは極めてシンプルな話だと思う。 

(社会部編集委員)

PR

社説・コラム アクセスランキング

PR

注目のテーマ