経済対策 不急事業の便乗を許すな 

西日本新聞 オピニオン面

 安倍晋三首相が新たな経済対策の策定を指示した。政府は2019年度補正予算を編成し、20年度当初予算との「15カ月予算」として切れ目のない執行を目指すという。

 過去にも繰り返された政策判断である。政府にくぎを刺しておきたいのは、こうした予算には不要不急の事業が紛れ込みがちだという点だ。効果に疑問のある歳出の隠れみのにせず、中身をきちんと精査すべきだ。

 経済対策の柱は、被災地の復旧・復興▽経済の下振れリスクへの備え▽来年の東京五輪後を見据えた経済力の維持向上‐になるという。

 今年も大きな自然災害が相次ぎ、被災地の復旧・復興に全力を挙げるのは当然だ。防災、減災対策など急を要する課題もあるだろう。

 政府は既に、広域に甚大な被害をもたらした台風19号について復旧事業の国庫補助率を引き上げる激甚災害に定めている。被災自治体が心配なく復旧・復興に取り組めるよう、まずは充実した補正予算にしたい。

 河川の氾濫や堤防決壊が続出したことを踏まえれば、抜本的な対策の検討も必要だ。とはいえ「国土強靱(きょうじん)化」の名の下、公共事業を上積みすることにはおのずと限界もある。便乗するような発想は厳に慎むべきだ。

 一方、経済の下振れリスクへの備えや経済力の維持向上という「名目」は曖昧だ。

 景気の現状について政府は「緩やかに回復している」との判断を維持している。米中貿易戦争の影響などで輸出に陰りが出ているとはいえ、きのう発表された19年7~9月期の実質国内総生産(GDP)は4四半期連続でプラス成長だった。

 消費税増税後の消費の冷え込みが懸念されてはいるが、財政出動によるカンフル剤が本当に必要な局面なのか、慎重に判断したい。むしろ成長戦略で結果を出す方が重要ではないか。

 安倍政権は財政規律が緩んでいるとの批判がある。20年度予算は概算要求で6年連続100兆円を超え、2年連続で過去最大を更新した。

 これと別枠で消費税増税対策として臨時・特別の措置を講じることにもなっている。キャッシュレス決済時のポイント還元マイナンバー(個人番号)カードを使用した新たなポイント還元制度など、効果が不透明な政策も少なくない。こちらも納得できる精査が必要だ。

 他方で、国と地方の基礎的財政収支を黒字化する財政健全化目標は20年度から25年度に先送りされた。実際はそれすら達成困難な見通しだ。政府は借金頼みの財政運営を続けていることを肝に銘じるべきだ。

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