病児保育、高まる需要 「企業主導型」が新しい受け皿に

西日本新聞 川口 史帆

 急な風邪や発熱で子どもを保育園に預けられないが、仕事を休むのが難しいとき、看護師などのいる環境で見守ってもらえる「病児保育施設」。共働き世帯の増加で必要性が高まる中、市町村委託の既存施設に加えて、企業主導型の保育施設が新しい受け皿になっている。九州では病児を受け入れる企業主導型が約70施設になった。働く親の強い味方と期待される一方、安定運営が難しく、制度改善の必要性を指摘する声もある。

 「頑張ったね。眠れたかな」。8日夕、福岡市南区のティンカーベル保育園の病児保育室。福岡県春日市のパート稲田共美さん(43)が息子の額をなでた。昼に38度4分の高熱を出して、通っている別の保育所から迎えに来るよう連絡があった。小児科で風邪と診断を受けた後、同園で預かってもらっていたという。

 企業主導型として9月に開所し、通常保育の11人と、3歳~小学6年の病児2人を受け入れている。稲田さんは「いざというときに頼れる場所。とても心強い」と話す。原千波園長は「働く女性の一人として、力になりたい」と語る。

 同県飯塚市の飯塚ママー保育園と幸袋らぶはーと保育園は、岩穴口(いわなぐち)広憲園長(38)が自らの経験を踏まえて開いた企業主導型だ。病児は計3人、0歳~小6を受け入れている。

 きっかけは会社勤めをしていた5年前。2歳の次男がよく熱を出した。妻は管理職で抜けられず、岩穴口さんが早退をした。病児保育施設は遠方にしかなく、利用しづらかった。退職後、同じように悩む親を助けたいと、今年4月と7月に2園を開園した。

 計38人が病児保育の登録をしている。市内に市委託の既存施設が一つあり、定員は6人。2園と合わせても計9人で、岩穴口さんは「インフルエンザなど風邪が増える時期には、全然足りない」と、施設の拡充や定員増を考えている。

      *

 既存の病児保育施設の多くは、市町村が医療機関や認可保育所に設置や運営を委託。厚生労働省の調査では、病児と病後児対応の施設は2018年時点で1622カ所あり、年に約100カ所ずつ増えている。

 一方、待機児童対策で16年から始まった企業主導型保育所は、設置企業従業員の子どものほか、地域の子どもも利用できる。審査や助成金支給をする公益財団法人「児童育成協会」によると、今年8月までに助成を決定した3817施設のうち、病児や病後児を受け入れているのは190施設。九州では622施設中70施設で受け入れている。

 既存施設と企業主導型を合わせた全体の受け入れ枠は徐々に拡大しているものの、利用はそれほど伸びていない。国は15年4月に施行した「子ども・子育て支援新制度」で、病児保育の年間延べ利用人数を20年度までに150万人に増やすことを目標に掲げた。だが実際に利用したのは17年時点で69万3千人だった。急な発熱でも弁当の用意を求められたり、風邪が流行する時期はいっぱいで断られたりと、使い勝手の悪さも影響しているとみられる。

      *

 首都圏で病児保育などを展開するNPO法人フローレンスの駒崎弘樹代表理事(40)によると、行政が認めなければ開設できない既存施設と異なり、企業主導型は事業者の意向で柔軟に始められ「保護者の選択肢は増える」と評価する。

 ただ企業主導型を巡っては、企業が助成金を不正受給したり、運営計画の甘さから閉園や定員割れが相次いだりと、審査のずさんさが明らかになっている。適切に運営されているか、監視体制も不十分という。

 さらに既存施設と企業主導型に共通する課題が、運営の難しさだ。行政からの補助金は利用者数に応じた“出来高払い”。だが病状が回復して直前にキャンセルが出たり、種類の違う感染症は同室に入れられなかったりして、定員まで預かることはまれで、安定した収入が見込めないという。

 駒崎さんは「せっかく受け皿が増えても、運営が不安定だと長続きせず、子どもも保護者も安心できない。補助金の支給方法を改善し、施設ではなく自宅で見る『訪問型』を充実させるなど、制度の在り方を見直すべきではないか」と指摘している。
 (川口史帆)

    ×      ×

 【ワードBOX】病児保育
 高熱などの「病児対応」▽回復中だが集団保育が難しい「病後児対応」▽保育中に微熱を出したときなどに様子を見る「体調不良児対応」がある。児童福祉法に基づき、病児保育事業の実施は市町村の努力義務となっている。施設ごとに協力医療機関と指導医を定め、病児10人に対し看護職員(看護師、保健師など)1人、同3人に対し保育士1人を配置しなければならない。病児と病後児は専用部屋で見る必要がある。

PR

くらし アクセスランキング

PR

注目のテーマ