日韓の軍事協定 現実踏まえ破棄見直しを

西日本新聞 オピニオン面

 日本と韓国の軍事情報包括保護協定(GSOMIA=ジーソミア)の有効期限が23日に迫った。両国関係の悪化から韓国が「国益にそぐわない」と協定の破棄を通告している。

 このまま失効すれば、東アジアの安定に禍根を残すだけでなく、日韓関係の亀裂も決定的なものになりかねない。文在寅(ムンジェイン)大統領には大局を見誤らず破棄決定を見直すよう求めたい。

 協定は軍事上の機密情報を交換する際、第三国への漏えいを防ぐためのものだ。日韓は2016年11月に締結して以降、北朝鮮の弾道ミサイル発射などに対応している。米国が扇の要となり、独自情報を融通し合い3カ国連携態勢を整えてきた。日米韓軍事協力の象徴である。

 文大統領はもともと北朝鮮に融和的で日米との安保協力には消極姿勢だった。協定破棄は政権与党の支持者にも賛同が期待できる政策判断でもあった。

 だが、冷え込む一方の日韓や両国と同盟関係にある米国の連携を試すかのような軍事挑発が周辺国から相次いでいる。

 北朝鮮は5月以降、ミサイル発射を繰り返し、10月には潜水艦から発射できる新型弾道ミサイル(SLBM)を発射するなど兵器の高性能化を進める。

 中国は海洋進出を強め、7月にはロシア軍機が初めて島根県・竹島周辺の領空を侵犯した。同じ日に中ロ両軍機が日本海上空で合流して尖閣諸島に向かってもいる。日米韓の連携がさらに後退すると判断すれば、同様の動きが一段と活発になる可能性がある。

 こうした現況からも協定の必要性は明らかだ。韓国の国防当局者も認めている。破棄に踏み切れば、この地域で米国の影響力低下にもつながり、北朝鮮や中国、ロシアを利すると専門家も指摘している。

 文政権は今こそ冷静に現実を見極めなければならない。対日関係に厳しい世論がある中、朴槿恵(パククネ)前政権が締結にこぎ着けた協定である。1年ごとに更新しここまで継続したのは、日韓双方に有益で重要だった証左ではないのか。安全保障の問題は感情論で対処する次元のものではない。

 文政権が破棄を決めたのは、日本の対韓輸出規制強化の対抗措置だった。韓国政府は規制強化を撤回すれば協定を存続させる方針だが、日本側に応じる気配はない。韓国側から協定破棄の方針を転換すれば、日本側にとっても無視できない関係改善のメッセージになるはずだ。

 例えば有効期限を暫定的に延長し、少し時間をかけて協議することはできないのか。日米両政府も韓国側に翻意を粘り強く働き掛けなければならない。

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