【動画あり】香港籠城、揺れる学生 大学傷つけられ 心が痛む

西日本新聞 国際面 川原田 健雄

 【香港・川原田健雄】政府への抗議活動が続く香港で、強硬姿勢を強める当局に対抗して大学に立てこもる若者たちが揺れている。学生側はキャンパス内外にバリケードを築いて徹底抗戦の構えを見せるが、先の見えない籠城に疲労の色は隠せない。周辺道路の通行妨害などで市民の支持が離れるのを恐れ、撤収する動きも出ている。

香港大周辺では道路のバリケードを撤去する親中派の住民らに学生が火炎瓶を投げる場面もあった

 「体は疲れて眠いのに1、2時間で目が覚めてしまう」。香港理工大に14日から泊まり込む中学4年(日本の高校1年に相当)のケイさん(15)は悩みを明かした。体育館に寝泊まりし、構内でシャワーも浴びるが「いつ警察が来るか分からず気が休まらない」。

 学生たちは警察車両が近づけないよう、歩道からはがしたれんがを周辺の道路にばらまき、信号機も破壊した。通信アプリを見て応援に駆け付けたシンさん(17)は「過激な行動はある程度仕方ないけど、ストレス発散のため暴力を振るう人もいる」と声を潜めた。

 校舎の壁には「殺人政権」など香港政府や中国共産党を批判する言葉が殴り書きされ、学長室がある建物はガラスの壁が割られていた。同大2年の男子学生(19)は「警察が大学に踏み込むのは絶対許せないし、学生を守らない学長にも怒りがある。それでも自分の大学が傷つけられるのは心が痛む」とこぼした。

 香港大では16日、親中派とみられる住民らが周辺道路の障害物やバリケードを撤去。近くの陸橋に陣取った学生側とにらみ合った。「暴徒!」と叫ぶ住民側に学生が火炎瓶を投げる場面はあったが、撤去作業自体は妨害しなかった。

 「無駄な衝突で警察に取り締まりの口実を与えたくない」と男子学生。大学構内では既に撤収作業が始まっていた。物資を運び出していた同大2年の男子学生(19)は「交通妨害を続けて大学を守っても、当局は何もせずに市民の怒りが学生に向くの待つつもりだ。ずっと同じ場所にいても仕方ない」と淡々と話した。

 背景にあるのは5年前の大規模デモ「雨傘運動」の失敗だ。学生らは幹線道路を占拠して行政長官選挙の民主化を求めたが、長引く占拠が日常生活に支障を来し、市民の支持を失った。「雨傘運動の失敗が教訓になっている」と大学院生(25)は語る。香港メディアは香港中文大でも立てこもっていたデモ隊が16日未明までに撤収したと伝えた。

 今回の抗議活動は特定のリーダーがおらず、個々人の思いや行動を抑制するのは難しい。香港大では、バリケードを撤去する住民らを止めようとしない仲間に「なぜ止めに行かないの? せっかく大学を守ってきたのに諦めるの?」と泣き叫ぶ女子学生もいた。“リーダーなき戦い”は手探りが続く。

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