自転車の保険 義務化で目指す事故根絶

西日本新聞 オピニオン面

 歩いていて自転車と接触しそうになり、肝を冷やした経験はないだろうか。とりわけ朝の通勤・通学時にはスピードを出した自転車が少なくない。

 福岡県が、自転車の利用者に保険加入を義務付ける条例改正を検討している。改正案を来年2月議会にも提出する。歩行者を死傷させ高額賠償を求められるケースもあり、加害者側が払えずに被害者が泣き寝入りするのを防ぐことなどが狙いだ。

 当然ながら、事故を起こさせない環境づくりが最も重要だ。自転車の交通ルールの教育・啓発は遅れていると言わざるを得ない。この条例改正を機に、学校や地域で啓発を強めたい。

 警察庁によると、自転車と歩行者の事故は年間約2500件あり、ここ10年ほどは横ばい状態という。自転車を運転するには免許も講習も不要で、誰でもすぐに乗れる。その手軽さがルール教育の死角になっている。

 自転車は道交法上「軽車両」に分類され、車道を走るのが原則だ。例外として幅の広い歩道には通行を認める標識がある。その場合も車道側をゆっくり走るなどの規則がある。あくまで歩行者が優先だ。

 にもかかわらず歩道の中央を疾走したり、歩道から車道に突然移って車と接触しそうになったりする運転者もいる。信号無視や夜間の無灯火走行など、道交法の決まりさえ知らないのではと疑うケースも多い。スマートフォンを操作しながらの運転では死亡事故も起きている。危険極まりない行為だ。

 増加する外国人労働者が自転車通勤する光景も珍しくなくなった。外国語でのパンフレット作成なども充実させたい。

 もっとも自転車自体には、その価値を再評価する声が高まっている。平成に入り相次いだ災害で交通網が寸断された際、車を補う移動手段として機動性がクローズアップされた。

 一昨年には、議員立法による自転車活用推進法が施行した。環境にも優しい自転車を交通体系の柱の一つに位置付ける内容だ。安全教育や自転車道整備などを国や自治体に求めている。

 国内の自転車保有台数は7千万台を超える。子どもから高齢者まで気軽に利用でき、車種も増えた。電動アシスト付きやスポーツタイプなど選択の幅が広がっている。

 だからこそ、安全対策はより重要になった。講習を義務付けて独自の通学免許制を導入した学校や、積極的にルール啓発活動をする販売店も増えている。

 福岡県の条例改正案は保険加入に罰則は設けない見通しだ。月額保険料は数百円と決して高くはない。自発的な加入を、安全意識向上の入り口としたい。

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