矯正より、話す意欲育てて 菊池良和(九州大病院・吃音外来医師)

西日本新聞 医療面

吃音~きつおん~リアル(7)

 小学1年の頃は「学校に行くのが楽しい」と言っていた男児が、小学2年になると、毎朝「学校に行きたくない」と言うようになりました。理由は「先生に注意されるから行きたくない」ということでした。

 母親が担任と話したところ、先生の子どもも吃音(きつおん)があったそうです。3歳頃に始まり、言葉を繰り返すたびに「違うよ」と注意して言い直させているうちに、自然に治ったとのこと。この経験から、男児にも同じように接していたようです。

 ところが、男児は小2になってから、言葉が出てこない難発がみられ、足でタイミングを取る随伴症状も出るなど、小1の頃より明らかに悪化していました。また、クラスメートからも「変な話し方」と指摘されるようになっていました。

 男児が九州大病院の「吃音外来」に相談に来たため、私は専門家として、担任に「話し方を注意するのではなく、話したい気持ちを育ててほしい。そして、クラスメートが話し方を指摘しないようにしてほしい」とお願いしました。しばらくすると、男児の症状は軽減しました。

 幼児の吃音は、男児で6割、女児は8割が小学校入学までに自然に治ります。吃音の原因の約80%は生まれ持った体質(遺伝子)だといわれています。つまり、先天的に吃音が治りやすい遺伝子なら治るということ。この担任のお子さんも親が注意したからではなく、先天的に治りやすかったから治ったのです。

 吃音のある人に話し方を指摘したり、矯正したりすると、逆に悪化することがあります。それよりも話したい気持ちや意欲を育てる関わりが大事なのです。これは吃音のある児童だけではなく、すべての子どもに当てはまると思います。

 「〇〇をやって、吃音が治った」などという情報があふれています。でも、治らなくても吃音という特性を持ったまま生きていける地道な支援態勢をつくることが大切です。親も教師も支援者も、常に知識を更新する必要があります。 (九州大病院医師)

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