米でヒロシマ伝える 俳優・曽我さんが手記の朗読活動 子ども亡くした父母の思いテーマ

西日本新聞 夕刊 徳増 瑛子

 米国在住の俳優・劇作家、曽我潤心さん(37)がニューヨークを中心に、原爆で亡くなった広島県立広島第一中学校(現広島国泰寺高)の生徒たちの父母の手記を朗読している。昨年の正月に広島に里帰りした際、国立広島原爆死没者追悼平和祈念館で開かれていた企画展で出合ったものだ。「一人一人に普通の人生があったことを伝えたい」。そう思わせてくれた一冊だという。

 「美しい星空は、前の夜とすこしも違っていないのに、地上は、一夜で変わり果てた焼野原となっています」「(息子の)博久も、あの日亡くなられた多くの広島の人々も、みんなの魂が天に昇り、この地上に再び惨禍が起きないようにと、私たちを見つめているように思われます」。原爆で息子を失った藤野としえさんの手記だ。

 原爆投下前夜、博久さんは星空を見上げ、こう話したという。「どうして戦争なんか起こるのでしょうか、止めてほしいなぁ、日本にない物はアメリカから送ってもらい、フィリピンにない物は日本から送ってやり、世界が仲よくいかんものかしら」

 広島一中の犠牲は369人。空襲に備えて火事の延焼を食い止めるため、住宅密集地の建物を壊す作業で動員され、被害を受けた。若い命を悼んだ父母の手記「星は見ている」には、子どもとの思い出などがつづられている。

 曽我さんは小学校から高校まで広島県内で過ごした。原爆については知っている方だと自負していたが、手記にあったわが子を思う父母の言葉にはっとさせられた。戦時中の人たちは、国のために尽くすことが当然だと考えていると思っていたが、「(現代を生きる)自分と同じ感覚を持っていることに気付いた」と言う。「過去」の出来事でしかなかった原爆や戦争が、身近な問題になった。

 日大芸術学部を卒業後、演劇の勉強のため、2011年に渡米した。米国では原爆の投下を正当化する向きが特に高齢層に多いことを実感する。だがそうした風潮は、多くの犠牲を出したことに対する「罪悪感の表れ」とも感じるという。罪の意識があるから、きのこ雲の下で何が起きたのかを知ろうとせず、目をつぶる、と考える。

 逆に戦争を知らない若い世代には罪悪感がない。だから、素直に手記を聞いてくれるのではないかと思う。ニューヨークでは大学のホールなどを借り、学生や市民に向けて朗読し「共感できた」「原爆を経験した人の気持ちが分かった」との声が聞かれたという。

 今は被爆者が書いた被爆詩を基に脚本を英語で執筆中だ。遠慮がちに被爆の実相や悲惨という言葉を用いるのではなく、率直に感情を伝える内容にする予定という。「被爆者の心情をもっと知ってほしい」。そう願う。 (徳増瑛子)

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