ソウル(韓国)上 古本も線路跡も魅力再生

西日本新聞 夕刊 大城 勲

 国同士の関係冷え込みをよそに、日本からの海外旅行先の人気上位をキープし続ける韓国。中でも定番の訪問先は首都ソウルだろう。ありきたりの観光では満足しない50歳目前の記者が、日本ではまだあまり知られていないスポットや楽しみ方を2回にわたり紹介する。まずは「再生」をテーマに、ソウルの新しい魅力を訪ねた。

 鉄材のアーチが幾重も連なる通路を挟み、約13万5千冊の古本が整然と並ぶ。市中心部から東へ車で約30分のところにある「ソウル本宝庫」。古本の持つ価値を市民共通の財産として見直そうと、経営難となっていた約30の古書店を市が支援し、倉庫を改装して今年3月にオープンした。本の販売代金は運営費となる10%分を除き、本を提供した古書店に渡る仕組みだ。

 いわば共同古書店だが、想像した古書店とは全く違うスタイリッシュな空間で、「インスタ映えする」と人気急上昇中なのだとか。訪れたのは平日午後だったが、スマートフォンや一眼レフカメラで撮影を楽しむ市民や観光客でにぎわっていた。

 絵本から専門書まで幅広い分野の本がそろい、愛読していた漫画「スラムダンク」の韓国語版も見つけた。日本語の本が並ぶ一角もあり、「九州方言の史的研究」という難しそうなタイトルの一冊も。カフェコーナーでくつろいでいた鄭来鎮(チョンレジン)さん(46)は「初めて来ましたが、堅苦しくなく親近感が湧きました。今度は家族と来たいですね」と満足そうに話してくれた。

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 鉄道の地下化に伴い廃線となった地上の線路跡が、憩いの場として生まれ変わったスポットもある。全長約6・3キロの細長い公園「京義線スッキル」だ。スッキルとは「森の道」の意味。線路沿いにあった歴史ある並木が残る緑豊かな公園で、所々にはかつて列車が走っていた線路を埋め込む演出もあり、景色と仕掛けを楽しみながら歩いた。

 公園がある麻浦区は出版社や印刷会社が集積しており、公園の一部区間に2016年秋、本をテーマにした「ブックストリート」が完成した。本を展示する列車の車両を模したブース、100冊の推薦図書を紹介するプレート、本と人の顔を融合したオブジェ…。感心するのは「絵になる見せ方」が徹底されていること。公園は人気スポットの弘大や延南洞に続いており、周辺にはインスタ映えを狙った外観のカフェや若い芸術家たちのアトリエなども点在し、眺めるだけでも飽きない。

 市民ガイドが活動しているのも特徴だろう。同区観光課が養成したガイドで、日本語ができるガイドも2人いるという。今回案内してくれた金賢和(キムヒョンファ)さんはパン好きで、パン屋を食べ歩きして巡る独自のツアーを企画するなど、それぞれのガイドがこだわりの案内をしてくれるそうだ。

 古いものをおしゃれな「映え」る観光資源に再生し、街の新しい魅力に変えるソウル。インターネット全盛の時代に合わせた首都の「したたかさ」と同時に、街と人が紡いだ時間を大切にする「優しさ」に触れた思いがした。次回は「環境」をテーマにソウルを楽しむ。 (大城勲)

 ●メモ

 ソウルは「都、首都」を意味する韓国語で、正式にはソウル特別市。「道」から独立しており、25の区がある。市統計によると人口約1005万人。人口密度は1平方キロメートル当たり1万6000人を超え、東京都の約2.5倍、福岡市の約3.5倍にもなる。

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