水俣の海で命と出会いを ダイバー森下誠さん ヒメタツ繁殖現場を案内

西日本新聞 熊本版 村田 直隆

 再生した水俣の海を発信したい-。そんな思いで海に潜り続けている人がいる。スキューバダイビングインストラクター森下誠さん(49)は、国内でもめったに見られないタツノオトシゴの恋の現場に国内外のダイバーを案内する。「一度汚染された海で命が誕生する瞬間に出会える素晴らしさを伝えたい」。地域おこしに目を向け、海の環境保護にも余念がない。

 1969年に水俣市牧ノ内で生まれ、幼少期はよく魚釣りや貝拾いをして遊んだ。高校卒業後、愛知県の自動車部品製造会社に入ったが2年で退社。自然の中で働きたいと、海洋生物を学べる専門学校を経て、ダイビング店に勤め、国内外の海に潜った。

 35歳ごろから故郷での独立を考えたが、かつて有機水銀に汚染され負の印象が残る海で事業が成り立つか不安もあった。そんな中、インターネットで写真家尾崎たまきさん=熊本市出身=が撮影した生き生きとした水俣湾の魚を見て心が決まった。「水俣の海の現状を伝えたい」と2009年にダイビング店「SEA HORSE」を構えた。

 08年に潜水調査をしていたときから、水俣の海に多く生息するタツノオトシゴに注目。特に観察が難しい繁殖行動の確認に力を入れた。高い確率で見られるようになれば「水俣の魅力の一つとして売り出せる」と考えたからだ。

 タツノオトシゴは、雌が雄の腹部にある袋に卵を産み付け雄が卵を守る習性がある。雌が雄に体を寄せ、卵を渡す姿がハート形に見えることから、恋愛成就のシンボルとして人気が高い。

 繁殖のために集まる地点で、夜中に生態調査を重ねて17年に初めてその姿を確認。現在は雄が卵を抱えた時点を把握することで、4月中旬~8月初旬に訪れる個体ごとの出産のタイミングを計って案内している。

 一方で、海洋生物がすみやすい環境作りにもダイバー仲間と取り組む。海中のごみ拾いや、海水温の上昇で大量発生し海草を食べ荒らすガンガゼウニなどの駆除を定期的に実施する。

 昨年、観察を続けてきたタツノオトシゴが、新種「ヒメタツ」であることが確認され注目された。今夏には護岸近くの繁殖スポットのライブ映像を陸上で見られるイベントも企画した。「今後は水俣の再生を象徴するヒメタツを保護することで、観光やまちおこしにもつなげていきたい」と力を込めた。(村田直隆)

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