ローマ法王爆心地へ 38年ぶり来日を前に(下)発信力 メッセージ拡散で世論喚起

西日本新聞 社会面 華山 哲幸 野村 大輔

 幼い弟の亡きがらを背負い、直立不動で火葬の順を待つ少年を捉えた「焼き場に立つ少年」。被爆間もない長崎での撮影とされ、悲しみをこらえる少年の姿が多くの人の心を揺さぶる。

 2017年末、この写真を広めるようローマ法王フランシスコ(82)が出した指示は教会を通じて広がった。日本国内では「戦争がもたらすもの」との法王のメッセージとサインを添えたカードが配られた。

 被爆地の「外側」からの発信は、被爆者や信者ではない市民にも心を重ねさせる。去年も今年も8月9日の原爆の日が近づくと、インターネットには写真の投稿に「これを忘れたくない」「二度と起こしてはならない」と添える書き込みが相次いだ。法王のメッセージが“拡散”した結果だ。

 実は、フランシスコはソーシャルメディアの使い手の顔も持つ。九つの言語で発する公式ツイッターのフォロワーは4900万人超。インスタグラムには信者の頭に触れて祝福し、ほほ笑みをたたえて手を握る姿が写る。親しみやすさが人気を支える。

 核廃絶の署名を国連欧州本部に届ける高校生平和大使の内山洸士郎さん(16)=長崎市=は、インスタグラムで「ローマ法王」と検索した人を、署名を呼び掛ける動画に誘導できるようにした。今年6月には活動を知ってもらうためバチカンで謁見(えっけん)し、「悲惨な過去を忘れないで」と声を掛けられた。法王とつながっている、と実感する。

 欧州での反核の高まりを背景に、38年前に来日した先々代のヨハネ・パウロ2世は広島で「戦争は人間のしわざ」と述べた。戦争の責任を国家や政治ではなく、人間の内にあると突き付けた言葉は共感を呼び、体験を語ることをためらっていた広島、長崎のカトリックの被爆者の心を開いた。

 核兵器を巡る立場では法王の対岸にいるトランプ米大統領はツイッターで、核の脅威をちらつかせる北朝鮮を名指しし「私の核のボタンは、はるかに大きくて強力だ」と刺激的な言葉をつぶやく。フォロワー6600万人は法王を上回る。

 核兵器を「是」とする超大国のトップに対抗するすべはあるのか。今回、爆心地に立つ法王の隣には「焼き場に立つ少年」のパネルが配される。撮影した米従軍カメラマン、ジョー・オダネル氏の遺族も並ぶ場で、法王は核廃絶を訴える。法王のメッセージがより効果的に伝わることを狙った“演出”ともいえる。

 長崎大核兵器廃絶研究センター(RECNA)の鈴木達治郎副センター長は、報道やソーシャルメディアを通じて、長崎の爆心地から世界の数億、数十億の人々に広がるであろう法王の姿に期待する。「きっと、核廃絶に向けた大きな力になる」

 (野村大輔と華山哲幸が担当しました)

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