県、代執行「排除せず」 長崎・石木ダム 反対派なお断念求める

西日本新聞 社会面 岡部 由佳里 平山 成美 竹中 謙輔

 長崎県と同県佐世保市が計画する石木ダム事業(同県川棚町)は18日、立ち退きを拒む13世帯の宅地を含む全ての事業予定地が、県収用委員会の定める明け渡し期限となった。反対派はこの日、県に事業断念を要請したが、平田研副知事は住宅などを強制的に撤去する行政代執行について「選択肢として排除しない」との考えを示した。県は19日以降、行政代執行の手続きが可能になる。

 県庁での要請には約50人が参加し、反対住民の岩下和雄さん(72)が「行政代執行すれば長崎の恥だ。全国民が見ている。それでもやるつもりか」と主張。17日に同町で反対派約700人が参加して開かれた全国集会で採択した「ダムは治水、利水の両面で全く不要」とする宣言文を提出した。

 平田副知事は「治水面でダムが一番効果が高い」などと説明し、反対派からは怒号が飛び交った。出張中の中村法道知事は「期限を迎え、いまだ明け渡しいただけておらず残念。協力に応じていただけるよう働き掛けを続けたい」とのコメントを出した。

 住民らが県と佐世保市にダムの工事差し止めなどを求めた訴訟は18日、長崎地裁佐世保支部で結審し、来年3月24日に判決が言い渡される。 (岡部由佳里、平山成美)

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■「みんな家族」「強制的」「仕方なか」 明け渡し期限、移転住民複雑

 石木ダム事業が進む長崎県川棚町には、反対する住民がいる一方、さまざまな事情で用地を明け渡し、移転した人たちもいる。故郷に残った住民が土地の明け渡しを突きつけられ、同じ集落に住んでいた元住民は割り切れない思いを吐露した。

 ダムが計画される川原(こうばる)地区で総代を務めた80代男性は、かつて「川原の思いを一つにする」と反対運動の先頭にいた。1982年、県が機動隊を投入して用地測量に踏み切った記憶は鮮明だ。「あそこまで強制的にやるとは思わなかった。むちゃくちゃだった」

 先祖代々、200年以上受け継いだ土地は結局2003年に手放した。「川原が嫌で移ったわけじゃないが、高齢になって百姓をするのはきつい。いくら反対してもダムはできるとも思った。仕方なか」

 川原に残る人たちに別れを告げるのはつらかったが、決断を悪く言う人は一人もいなかった。同じく川原で育った男性の妻は「みんな家族みたい。人間関係が良くなかったら、とっくに県に押し切られていた」と話した。

 国の事業採択から44年の石木ダム計画。「長い、長すぎる。移転してから何年たつ? ダムになった自分の故郷は見たくない。かといってダムができなければ、なんで移ったのかという気持ちになる」。男性は複雑な胸中を打ち明けた。

 一方、明け渡しに応じずに集落で暮らす川原房枝さん(79)は「それぞれ事情があった人もいる」と移転した元住民を思いやる。石木ダム工事差し止め訴訟原告の一人、岩本宏之さん(74)は「今秋もこの土地で稲刈りをした。生活を変えるつもりはない」ときっぱり語った。 (竹中謙輔、平山成美)

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