首相歴代最長へ 1強政治のゆがみを正せ

西日本新聞 オピニオン面

 安倍晋三首相の首相在職日数(第1次政権を含む)があす、桂太郎元首相を抜いて憲政史上最長となる。6人もの首相が立て続けに在職1年程度で交代するという不安定な時期を経て誕生した異例の長期政権だ。

 政治に安定を取り戻し、経済の再生に尽力したのは確かである。他方、歴史的な長期政権にふさわしい業績は何か-と問われると即答に窮してしまう。最近は長期政権の弊害も目立つ。

 政権内部におごりやゆがみはないか。歴代最長となる首相には厳格な再点検を求めたい。

 振り返れば、安倍首相は2006年に「戦後生まれ初」で「戦後最年少」の首相として第1次内閣を発足させた。しかし、年金記録問題や閣僚の相次ぐ辞任で政権基盤は揺らぐ。参院選敗北後に体調不良で退陣した。

 これが短命政権の先駆けとなり、民主党への政権交代にもつながる。首相自身「片時たりとも忘れたことがない」と述懐する通り、この痛恨の挫折が後に築く長期政権の糧となったのは想像に難くない。

 政権奪還以来、一貫して「経済再生」を内閣の最重要課題と位置付け、景気は「戦後最長」とされる拡大局面が続く。地方経済や中小企業に恩恵が行き渡らず、生活実感には乏しいとされるが、安定政権による「経済最優先」の姿勢は多くの国民が好感してきたと言えるだろう。

 その政治的果実が政権奪還の衆院選を含め衆参の国政選挙で6連勝という「圧倒的な信任」であり、巨大与党に支えられた「1強政治」の出現である。

 特定秘密保護法集団的自衛権の行使を容認する安全保障関連法など、国民の批判や反発が強い法整備も「数の力」で押し切った。内閣支持率の底堅さも歴代内閣に類を見ない。

 ただし、その強さが有力な「ポスト安倍」候補を絞り込めない自民党の党内事情と、政権交代への緊張感を希薄にした野党の自壊と分裂に支えられている側面は見逃せない。

 森友・加計(かけ)学園問題に象徴される官僚組織の退廃や、忖度(そんたく)政治の横行と野党が指摘する体質はまさに長期政権ゆえの副作用だろう。その意味でも「歴代最長」の称号を手にする直前というタイミングで噴き出した「桜を見る会」を巡る問題は、くしくも「長期政権の光と影」を私たち国民に考えさせる。

 「もっと他に論議すべき問題はある」という意見もあるが、一国を代表する首相に「公私混同」など断じてあってはならない。公選法などの法律に違反かどうかを問う以前の、根本的な政治姿勢の問題である。憲政史上最長の名に恥じない誠実な対応を首相に改めて求めたい。

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