細やかな作業が生む「傑作」 福岡市・ピースプラント<連載>チャレンジド×アート(3)

西日本新聞

 赤い花と石畳が印象的な背景に、笑顔で立つ金髪の女の子。手をつないでいるのは、かかしとブリキのきこりだ。童話の一幕を描いた絵かと思いきや、実は刺しゅうでできていた。

 福岡市の地下鉄・六本松駅(中央区)から5分ほど歩くと、「ピースプラント」のアトリエがある。ここでつくられるカレンダーは毎年、多くの人が楽しみに待っている。2020年のテーマは「オズの魔法使い」。アトリエの作家たちが手掛けた刺しゅうや絵が並ぶ。

2020年用のカレンダー。表紙の絵は刺しゅうの作品が基になっている

 ここ数年、毎年表紙を飾る刺しゅう作品を手がけている男性の机には、何十色もの刺しゅう糸の束がある。手作業で丁寧に作品を仕上げる男性には、色使いにもこだわりがある。あるとき、白い糸を探していた男性にスタッフが糸を手渡すと首を振った。「これじゃなくて、『158番』を買ってきてほしい」

男性が持つ巾着袋の中には、色とりどりの刺しゅう糸が詰まっている

 オズの魔法使いの刺しゅうも、木の葉や花の茎などで緑色の糸を何色も使い分ける。完成に2カ月もかかった大作だ。男性が持つポーチの中には、刺しゅう糸の色番号に糸の切れ端をテープで貼り付けた色見本がぎっしり。徹底的にこだわるからこそ、妥協のない作品に仕上がる。

   ◆    ◆   

 簑田利博さん(59)が描き出す細かな絵に目を引かれた。細いボールペンを好む簑田さんは、俯瞰(ふかん)した構図を得意としている。

簑田さんの作品「福岡ドームの野球観戦」は、得意の記憶力を生かして描いた力作だ

 ぎっしりと詰まった人、人、人。福岡市のヤフオクドームに野球を見に行った人なら思わずうなずき、ほほ笑むだろう。簑田さんは視覚的な記憶力が強い。一度見た光景を、キャンバスに再現することができる。

 この絵に一体、何人が描かれているのか-、簑田さん本人も「分からない」。米粒よりも小さいが、一人一人にきちんと表情がある。簑田さんの集中力と根気があってこそ、描ける1枚だ。

簑田利博さんは細やかな書き込みが人気の作家

 「エメラルドの都」は、来年のカレンダーに採用された1枚。簑田さんは絵にアルファベットや漢字なども書き込むのを好む。幾何学的なほかの模様と相まって、魔法使いが住む不思議な都の風景を演出している。

簑田利博さんは細やかな書き込みが人気の作家

 

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