「根性論は響かず」「ハラスメントにSOS」 若者の離職阻止へ本音懇談
高卒就職者の早期離職率が高い北九州市で、地場企業の経営者や社員が、教諭や生徒と膝をつき合わせ、より良い職場環境づくりを目指す試みが続いている。厳しい指導よりもソフトな対話重視、「ハラスメント」を巡る苦悩…。それぞれの立場の本音や模索、助言に耳を傾けた。
福岡労働局によると、2015年3月の高卒就職者(県内全体)7530人のうち、3年以内に43%に当たる3235人が離職。13、14年の3月卒も3年以内に45%以上が離職している。一方で、同市では就職希望者の市外流出も少なくない。
福岡県中小企業家同友会北九州地区は危機感から「採用・共育研究会」(市丸皓士会長)を立ち上げ、17年から校長らとの懇談会や学校側に出向く「出前出張講座」をしている。
◆先生の本音~礼儀を教えられない
同市小倉北区のホテルで11月8日にあった懇談会には北九州・京築地域の公立12高校の校長や進路指導担当の教諭ら約20人が参加。建築や介護事業など地元17企業の経営者らと向かい合った。五つのグループに分かれた意見交換では、時代の変化の中で、教諭側が「精神論」をかざせない実情を吐露した。
「今の生徒たちのコミュニケーションはとにかく、スマホ。けんかをするのもスマホ。教員と生徒、先輩後輩の上下関係で礼儀を教えることも難しくなった」
「(社会に対応できる)タフな人材を育てないといけないが、指導しようにもいろいろな『ハラスメント』が多くてがんじがらめになっている」
◆経営者の模索~大いに失敗させよう
企業側も模索が続く。
「根性論は響かず、心はかえって離れていく。いかに対話して理解を進めるかが大切だ」
「失敗から学ぶことがある。大いに失敗させるぐらいのテーマを与えることが(人材育成で)大事だ」
市丸会長は双方の議論を受けて総括した。
「若い人たちが自分の理屈でできないと思うことも、やってみなければ分からないことがある。理不尽だと思うことも(企業側は)やらせるべきだ」