複合災害、タイムラインで命守れ 人吉市と国、熊本県が協働

西日本新聞 九州+ 古川 努

 たびたび水害に見舞われてきた熊本県南部の球磨川流域で今月、国と県、人吉市が協働し、大規模災害時の役割分担を時系列でまとめる防災行動計画「タイムライン」の検討会が本格始動した。地球温暖化を背景に災害級の大雨が頻発。河川改修やダムによるハード防災の限界もみえる中、全国で初めて水害と土砂災害の複合的災害への対応を目指す人吉市で、検討会の現地調査に同行した。

 1日午後、住宅街を流れる幅4~5メートル程度の川の周りに、国や県、市の防災担当者らでつくる検討会のメンバー約30人が集まった。

 氾濫警戒の対象となる球磨川支流の一つ、御溝川。最大規模の洪水が発生すれば、住宅の1階部分が水に沈むと想定される。球磨川との合流部に近い市中心部やJR人吉駅周辺でも浸水の恐れがあるという。

 「どうやって住民に避難を呼び掛けるのか」。検討会座長の松尾一郎・東京大大学院客員教授から質問が飛ぶ。避難情報を出す役割の市側は「膝丈程度の浸水は時々あるが大災害は未経験で、事前の取り決めはない。いざとなれば消防団が駆け付けるはずだが…」。現地調査は、こうした防災の「隙間」を埋めていく作業でもある。

 球磨川本流は国管理、中小の支流は県管理、住民に避難情報を伝えるのは市町村。課題を洗い出し、具体的な対応策と役割を決めておくには、平時から管轄を横断した防災態勢づくりが欠かせない。

 検討会が目指すのは(1)球磨川本流の氾濫(2)支流(万江川、胸川、山田川、出水川、御溝川、福川)の氾濫(3)土砂災害-という3種類が複合的に発生する場合を想定した全国初の計画策定だ。松尾座長は「九州、全国のモデルケースとなり得る」と評価する。

 昨年7月の西日本豪雨や今年10月の台風19号被害では、河川の氾濫と土砂災害が相次いだ。広域的には同時多発的にみえるが、地域ごと、河川ごとで捉えると発生は段階的だ。球磨川流域で検討中のシナリオ案では(1)中小の支流の氾濫で浸水被害が局所的に発生(2)各地で土砂災害が発生(3)球磨川本流が氾濫-の順での事態悪化を想定し、時間軸に沿って役割を決める。

 ただしタイムラインは万能ではない。行政側が適切に避難勧告や指示を出しても、住民の行動に結び付かなければ人的被害をゼロにはできない。検討会の村中明・東邦大客員教授は「予想雨量や河川の水位などを分析し、どんな災害につながる可能性があるのか、具体的に伝える必要がある」と提起した。

 検討会は今後、福祉、教育、医療、観光の各関係者や消防団などから意見を聴取し、本年度中に試行版をまとめる。20年度には地域住民向けタイムラインを策定し、実践的な仕組みへと進化させていく方針だ。 (古川努)

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