教員の働き方改革 不安 年単位で調整「変形労働時間制」

西日本新聞 社会面 本田 彩子

 年度初めなど、忙しい学期中に勤務時間を延長する代わりに、夏休みにまとめて休みを取る-。働く時間を年単位で調整する「変形労働時間制」が公立学校の教員に適用できるようにする教職員給与特別措置法(給特法)改正案が19日、衆院本会議で与党などの賛成多数で可決された。長時間労働が深刻な教員の働き方改革の一環で、今国会で成立する公算が大きい。導入は自治体の判断に委ねられるが、現場からは実効性を疑問視する声や「残業の実態が見えにくくなる」など、反発の声も上がる。

 「定時が延びれば、今まで以上に遅い時間に会議が入るようになるかもしれない」。福岡市の公立中の女性教諭(40)は不安しかない、と漏らす。

 現在、公立学校教員の勤務時間は7時間45分(プラス休憩時間45分)。変形労働時間制の導入で、繁忙期は1日1~2時間ほど延長され、定時が午後7時前後までになる可能性がある。時間外に職員会議が入ると「今は『時間外で申し訳ない』という雰囲気がある。定時の範囲内となれば会議が入れやすくなって、自分の仕事は残業や持ち帰りになるのでは」と言う。

 女性教諭には3人の子どもがおり、保育園の延長は午後7時、小学校の学童保育は午後6時まで。勤務時間の延長は難しい。「国は育児や介護中の教員には配慮すると言うが、自分だけ除外してほしいとは言いだしづらい」と訴える。

 同市の公立中の男性教諭(33)は「本当に夏休みに休みをまとめ取りできるのか」と疑問を口にする。部活動の大会や練習、研修など、夏休みも業務がある。学期中も多くの教員が1日2時間以上の時間外労働をしているのが現状だ。「業務量は多いのに、条件整備はできていない。今のタイミングでの導入は、見えない残業が増えるだけだと思う」と言う。

 一方、国立大付属の学校では、既に変形労働時間制を導入する学校が多い。九州の国立大付属小での勤務経験がある男性教諭(48)によると、同校では会議のある月曜は1時間、校内研修のある木曜は2時間、さらに教育実習中も2時間多く勤務する代わりに、夏休みは10日以上の休暇があったという。男性教諭は「教育実習の受け入れが多く、夏休みには(公立学校のような)研修がないという付属小特有の実情には合った働き方だった」。ただ、子育て中などで時間が制限された同僚はいなかった。「制度を導入するならば、教員の実情に合わせた環境づくりが必須だ」と話した。 (本田彩子)

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「業務見極め環境整備を」専門家

 変形労働時間制は、給特法改正案が今国会で成立すれば、自治体の条例制定で2021年4月から導入可能となる。学校の働き方改革を議論する中教審の委員も務めた教育研究家の妹尾昌俊さんは、この制度について「夏休みにまとめて休みやすくするという目的はあるが、残業の付け替え的な性格のもので、長時間労働の是正にはつながらない」と話す。

 文部科学省が示すイメージは、学校行事などが集中する4、6、10、11月に週3時間ほど勤務時間を増やし、その分を8月に約5日分の休みとして振り替えるといった活用。妹尾さんは「勤務時間が毎日延びるわけではないが、文科省のイメージ通りに自治体や学校が運用する保障はない」と言う。

 今回の改正案では、変形労働時間制の導入と合わせて、教員の時間外勤務の上限を「月45時間、年間360時間」とする文科省の指針が法律に格上げされ、今以上に重く順守が求められる。一方で、2016年度の文科省の調査では、公立の小学校教諭の82%、中学校教諭の89%が月45時間の上限を超えているのが現状だ。

 妹尾さんは「変形労働時間制よりも前に、業務の精選と教員定数の見直し、外部スタッフの増員、学校のICT(情報通信技術)環境の整備などを進めない限り、根本的な問題の解決にはならない」と指摘している。

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