九州50病院 維持か再編か 人口減で病床減、危機感は共有

西日本新聞 総合面 斉藤 幸奈

 厚生労働省が9月、再編統合の検討が必要な公立・公的病院名の公表に初めて踏み切った。九州では50病院が該当。名指しされた病院や自治体には「地域の実情を反映していない」などの反発が根強い一方、人口減が進む中で多くの関係者が「全国的に病床数を減らさないといけない」との問題意識は共有する。ニーズの変化に対応しつつ、どう地域医療を守るのか。

 検討対象に挙げられた嶋田病院(福岡県小郡市、150床)を運営する医療法人社団の島田昇二郎会長は「住民が安心して暮らすために欠かせない病院だ」と力を込める。消化器外科や脳神経外科など25診療科を掲げ、市内唯一の救急告示病院として救急の受け入れ数は年間2千件以上。「もし縮小したら救急医療への影響は大きい」と憤る。

 障害がある人の医療の中核を担う北九州市立総合療育センター(125床)も名前が挙がった。昨年、建て替え工事を終えたばかりで、担当者は「市内外から患者が集まっている」と存在意義を強調した。

 厚労省が病院名公表という強硬手段に出た背景には、医療需要の変化と現在の医療体制との隔たりがある。人口減と高齢化が進めば、医療費がかさむ「高度急性期」と「急性期」の病床を計20万床ほど減らす必要があると試算される。同省は2017~18年度にかけて自治体に再編統合の検討を求めてきたが、各地の議論は「現状維持」のまま、進んでいない。

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 「人口減に応じた合理化は避けられない」。佐賀県の小城市民病院(99床)は、厚労省の指摘を冷静に受け止めた。既に、同様に公表された同県の多久市立病院(105床)と統合計画を進めている。

 両病院がある同県中部地域は25年には約1200床が過剰になる見込み。地域医療の維持には、機能の集約で医師の偏在解消や経営健全化を目指すしかない。小城市民病院の事業管理者田渕和雄さんは「病床数を適正化しなければ、病院の存続そのものが危ういとの危機感は多くの病院が抱いているはず」とみる。

 公表リストには入らなかったものの、九州では熊本県玉名市の公立玉名中央病院と玉名地域保健医療センターでも統合が進む。

 ただ、暮らしに直結する医療機関の再編統合は容易ではない。統合案が浮上している福岡県の公立八女総合病院、筑後市立病院では、筑後市側が「市民の理解を得るだけの説明材料がない」とする。両病院に医師を派遣している久留米大が医師不足を理由に打診したのが発端だったが、着地点は見えていない。

 公立・公的病院の病床の割合は全体の3割程度で、今後は約7割を占める民間病院も含めての議論が必要になる。年間8千億円を投じる公立病院の合理化を先行させ、議論を促そうという国の意向を危惧する声もある。城西大の伊関友伸教授(行政学)は「採算が合わずに民間では難しい過疎地や周産期、小児の医療など、公立ならではの役割は大きい」とくぎを刺す。

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 名指しされた計424施設は来年9月までに、再編統合も視野に将来図を描き直さなくてはならない。ニッセイ基礎研究所の三原岳主任研究員は「『総論賛成、各論反対』になりがちだからこそ、丁寧な議論と合意形成が求められる」と指摘。各地で将来のあり方を議論する「地域医療構想調整会議」の質の向上が必要だと話す。

 議論が活発な地域ほど、自治体が地域ごとの外来患者数や、在宅に移行できる患者割合など具体的な需要予測を細かく示しているという。三原さんは「具体的に将来の医療ニーズを可視化することで、地域の実情に合致した病床数や病院ごとの役割が見いだせる」と提言する。

 多くは自治体職員や医師会、病院関係者らが担う会議メンバーについて、みずほ総合研究所の戸高啓太さんは「利害関係者ばかりだと本音で話ができない恐れもあり、外部の有識者や経営の専門家などをもっと加えるべきだ」とも提案する。会議の資料や議事録をホームページで公開する自治体は6割程度(18年度、三原さん調査)。今後は議論の透明性を確保した上で、住民も議論に巻き込み理解を得ていく必要もある。 (斉藤幸奈)

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