聞き書き「一歩も退かんど」(24) 素っ裸で屈辱の検査 志布志事件冤罪被害者 川畑幸夫さん

西日本新聞 オピニオン面 鶴丸 哲雄

 35回に及ぶ任意聴取の末、私は2003年7月24日、公選法違反(買収)の疑いで逮捕されました。逮捕容疑は3月下旬、妻のいとこで鹿児島県議の中山信一らと共謀し、志布志市の懐(ふところ)集落で10人に現金を配ったというものです。

 否認を貫いた私をなぜ逮捕できたのか。志布志署の取調室で手錠をかけた刑事に尋ねると、「きょう逮捕された池口勤という男が、川畑から10万円もらったと認めた」と言いました。私はこの時まだ池口さんの顔すら知りません。この刑事の話もでっちあげです。私は「大変なことになるよ」と警告しておきました。

 まずはT警部補に連れられ体調確認のため市内の病院へ。手錠をはめた私を待合室の人がじろじろ見ます。T警部補が上着で隠そうとするのを「いい、いい」と強く制しました。当然です。やってないのだから。

 志布志署で1泊し、翌日、護送車で鹿児島市へ。鹿児島地検で書類にサインし、連れて行かれたのは鹿児島南署でした。ここも裏口から通されて2階へ。頑丈な鉄製の二重扉が開くと、そこが留置場でした。

 内部は扇形で、入り口から六つの部屋が見渡せる構造。おりの中の人々の目が一斉に私に注がれます。

 すると留置場の担当官が「川畑、シャツを脱げ。ズボンも」。言われた通りにすると、「パンツも脱がんかー」。えーっと戸惑っていると、ついたてが運ばれてきました。素っ裸になると、「前に体を曲げて尻を出せ」。くぎなどを持ち込ませないためでしょうが、何という屈辱でしょう。

 服を着ると、「川畑っ、3号室へ」。幅50センチくらいの小さな出入り口をくぐると、広さ6畳ほどの部屋に青畳が敷いてありました。先客は男性2人。若い人は大学生で強姦(ごうかん)容疑、40歳くらいの人は消防士で窃盗の容疑で捕まったとか。大学生は「付き合っていた彼女に仕組まれた」と言っていました。消防士は盗みを悔い、残された妻子の身を案じていました。私は「人間、いつでもやり直せるよ」と声を掛けました。

 その数年後、出所した消防士が私のホテルを訪ねてきました。「妻と離婚し、代行運転の仕事をしています」とのこと。私は「頑張らんといかんよ。奥さんと子どもさんもいずれ帰ってくるから」と励ましました。その2カ月後、この男性から電話が。「妻と子どもが帰ってきました」-。臭い飯を食った仲間の弾む声。うれしかったですね。 (聞き手 鶴丸哲雄)

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