崩落リスク、どう読む 大規模盛土造成地マップ

西日本新聞 くらし面 長谷川 彰

 宅地が滑動(かつどう)崩落する危険性の有無を調べる基となる大規模盛土(もりど)造成地マップ作りが、全国で進められている。本年度中に、すべての市区町村分が公表される見通しだ。該当地に居を構える住民は当面、マップから何を読み取ればよいのか。

 ▼緑と青で位置表示

 県や市区町村など自治体のウェブサイトで公表されている大規模盛土造成地マップを、パソコン画面で開いてみる。モノクロ地形図の上に、ところどころ、緑色や青色で塗られた区域が目に入る。

 大規模な造成地には、丘陵や山の谷間を埋め立てる「谷埋め」型、斜面に土を盛る「腹付け」型の工法で造られた場所が含まれていることが多い。マップの緑色は谷埋め型、青色は腹付け型の盛り土を指す。

 こうした盛り土の部分には地下水が集まりやすく、地震や豪雨をきっかけに滑動崩落と呼ばれる地すべりが起きる恐れがある。

 ただ、九州大大学院の笠間清伸准教授(防災地盤工学)は「マップで色づけされた場所が、即座に危険箇所というわけではない」とくぎを刺す。

 マップは、古い地形図や航空写真などに現在の地形図などを重ね合わせ、今ある造成地のどこが昔の谷を埋めたのかなどを判別して作成されている。つまり、そこから読み取れるのは谷埋め型、腹付け型の盛り土が存在する、おおむねの位置だけだ。

 「そうした場所でも、地下水がうまく抜けるような適切な地盤の造成がされていればリスクは低いと考えられる」(笠間准教授)

 大切なのはマップの公表後、その中で危険性が高いと思われる場所はどこかを調べ、その上で必要な対策を進めていくことだ。

 国土交通省はマップ公表までの作業を「第1次スクリーニング」と呼び、それから先、地盤の安定性を確認し、滑動崩落の恐れがある場所を割り出すまでの作業を「第2次スクリーニング」と呼んでいる。

 現状は本年度中に第1次を終え、来年度以降、第2次へ進もうとしている段階だ。今の時点では、ここは危険度が高いが、そこはさほどでもない、といった評価ができる状況ではない。

 ▼まず見ることから

 第2次の作業は、まず該当地のうち、どこから優先的に調査するか、計画を立てるところから始まる。

 国土交通省は、造成年代の調査や現地調査を併せて優先度を判定するよう求めている。

 計画づくりは県などが行い、まとまれば該当する市や町が安全確認作業を担い、県などはそれを支援していくやり方になる見通し。計画ができて安全確認作業が始まるまでには、まだ時間がかかりそうだ。

 住民レベルで今できることは、自分の住む自治体のマップが公表されたら、まず見てみること。

 作成に用いられた古い図面などは精度が低い場合もあり、色づけされた範囲の境界部付近は個々人の住宅の敷地がそこに掛かっているかどうか、厳密には判読できないのも現実だ。

 それでも、該当地の周辺に住む人も含め、何らかのリスクを抱えた造成地が身近にあることを、あらかじめ知っておくのは防災・減災の第一歩。

 笠間准教授は「マップで示された盛り土部分に住宅がある人は、擁壁に亀裂や水がいつもしみ出している場所がないか、盛り土の境界部付近の地表に亀裂など異常がないかなど、目配りをしておくことで備えになるはず」と助言する。

 次回は、計画づくりや安全確認作業はどう進められるのかなどを報告する。

 (特別編集委員・長谷川彰)

 ■全自治体の76% マップ公表

 国土交通省の集計(今年9月2日時点)によると、大規模盛土造成地マップを公表した自治体数は、全体の76.2%に当たる1326市区町村。来年3月までに全自治体で公表が完了する見通しという。

 同時点での九州7県の公表率は、福岡58.3%▽佐賀0%▽長崎95.2%▽熊本100%▽大分100%▽宮崎65.4%▽鹿児島41.9%。佐賀県では国交省の集計発表後、鳥栖市や神埼市など6市町について公表されている。

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