IT企業統合 利用者の支持あってこそ

西日本新聞 オピニオン面

 急成長するIT業界の厳しい生存競争を物語る挑戦だ。検索大手ヤフーと無料通信アプリLINE(ライン)が統合し、米国と中国の巨大IT企業に対抗する第三極を目指すという。

 IT業界は人材や資金、顧客などのデータが強者に集中し、より強くなる「強者総取り」の世界だ。現在はグーグルなど「GAFA」と呼ばれる米国4社と、アリババグループや騰訊控股(テンセント)といった中国勢が市場を席巻している。

 早く手を打たなければ日本国内もいずれ海外勢にのみ込まれてしまう-そんな危機感が今回の決断を後押ししたと言える。

 今回、経営統合で合意したヤフーを展開するZホールディングスとLINEは国内では勝ち組だ。買い物や決済、会員制交流サイト(SNS)など暮らしに関わるサービスを幅広く展開し、多くの個人利用者や顧客企業を獲得し成長してきた。

 国内利用者数は単純合算で1億3千万人になる。両社のサービスを使ったことのある人はかなりの数に上るだろう。

 新会社では人工知能(AI)の開発に力を入れ、生活全般に関わるサービスを提供する「スーパーアプリ」を実現し、アジアに打って出る方針だ。

 IT業界の勢力図を塗り替える戦略は、今後の日本経済や社会全般にも影響するはずだ。注目に値する試みだろう。

 その成否は、新会社のサービスに対する利用者の支持が握っている。ぜひとも利用者重視の姿勢を貫いてほしい。

 新会社はソフトバンクグループ傘下に入る。グループ内で重複するサービスを整理統合したり、寡占化で競争が停滞したりして、利用者が不利益を被ることになれば本末転倒だ。

 収集するデータの扱いも気になる。幅広いサービスを提供すれば、多くの個人データが手に入る。インターネットの検索内容や通信販売の購買履歴などがあれば、家族構成や好み、生活パターンまで類推できる。多様なデータの蓄積はIT企業の利益の源泉でもあるが、知らないうちに個人データが悪用されかねないとの懸念は拭えない。

 こうした「プラットフォーマー」と呼ばれる巨大IT企業の規制は国際的な課題でもある。今回の統合を契機に、日本政府内の検討作業も急ぐべきだ。

 新会社は国内で圧倒的な強者となるだけに、独禁法上の問題も重要だ。公正取引委員会によると、ネット通販では今でも、規約の一方的な変更などIT企業が優越的な地位を利用し、出品者に不利益を強いる事例が報告されている。両社は新会社が世の中に歓迎される形で船出できるよう努めてほしい。

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