【特派員オンライン】疑心暗鬼が交錯する街

西日本新聞 川原田 健雄

 「今夜、救出作戦を決行する」。19日、デモ隊が占拠した香港理工大周辺で取材していると、こんな情報が会員制交流サイト(SNS)で流れた。大学から脱出した若者を市民が車で安全な場所に運ぶという。

 合流地点の記載はないが、想定される場所に行くと支援者らしき市民が確かにいた。4人組の男女が物陰から双眼鏡で警官の様子をうかがっている。運転席に人影のある車も十数台、路上駐車していた。「いざという時は一部が道をふさいで警察を足止めする計画だ」。同行した香港人の知人が教えてくれた。

 離れた陸橋には先ほどの4人組を凝視する男性がいた。私の後ろにも男性2人組がつけてくる。私服警官だ。警察も情報をつかんでいるのだろう。

 路地に入ると、若い女性が不自然にスマホを向けてきた。彼女はデモ支援者か。カメラをかついだ私を警察の偽記者だと疑って撮影したのかもしれない。「誰が敵か味方か分からない。これが今の香港だ」と知人。結局この場所では、救出劇も大捕物も起きなかった。わずかな街灯に照らされた暗い街は、疑心暗鬼の濃い闇に覆われているような気がした。 (香港・川原田健雄)

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