「アセンション島」からの不審な着信相次ぐ 「国際ちりつも詐欺」か

西日本新聞 黒田 加那

 「スマートフォンに『アセンション島』と表示された不審な電話がかかってきました」。福岡県宇美町の60代男性から西日本新聞「あなたの特命取材班」に相談が寄せられた。アセンション島といえば、ナポレオンが幽閉されたセントヘレナ島とともに南大西洋に浮かぶ英国領の孤島。なぜそんなところから九州に電話がかかってきたのか。

 21日午前10時半ごろ、男性のスマホに「010247」で始まる知らない番号から国際電話がかかってきた。発信元として「アセンション島」の文字。もちろん、この男性には縁もゆかりもない場所だ。

 この日着信があったのは男性だけではなかった。ツイッター上では正午ごろに「アセンション島」がトレンドワード入り。男性と同じく午前中に着信があったとの投稿が相次いでいる。

 いずれもアセンション島の国番号を示す「247」が含まれている電話番号からで、1~2回ほど短くコールしてすぐ切る「ワン切り」で着信履歴を残すのが特徴だった。

 実際にかけ直すと、どうなるのか。取材班がスマホでかけてみると、プップッ…という音の後に通話が途切れ「接続が切れました」という表示。しかし着信履歴にはちゃんと「アセンション島」とあった。

■国際詐欺のカラクリ
 一体誰が何の目的で発信しているのか。「海外の犯罪組織が現地の通信会社と手を組んで『国際ワン切り詐欺』をしている可能性がある」とITジャーナリストの三上洋さんは指摘する。

 電話をかけ直せば、高額な国際電話料金がかかる。その一部が、接続料として日本の通信会社から現地の通信会社に支払われる仕組みになっている。犯罪組織が「国際ワン切り」を仕掛け、接続料収入を得る現地の通信会社からキックバックをもらう-そんな構図が推測できるという。

 例えば、日本のある通信会社のスマホから平日昼間にアセンション島に電話をかけた場合、たとえ1秒で切っても30秒ごとに180円かかる。もしかけ直しても1人当たりの被害額は少なく、犯罪組織のもうけはあまりないように思えるが「自動プログラムを走らせているだけでお金が稼げる仕組みになっているのだろう」と三上さん。

 実際にアセンション島から電話をかけているわけではなく、インターネット回線を使うIP電話で自動的に大勢の人に発信するシステムを使っているとみられる。小さな稼ぎも積もれば山となる。「国際ちりつも詐欺」という訳だ。

 9月にはアフリカ北西部のモーリタニアからの不審な着信が日本各地で相次いだ。かけ直すと「しばらくお待ちください」などと通話時間の延長を狙うような日本語のアナウンスが流れた事例もあったという。

 ネット上では「かけ直せば個人情報が流出する」と注意する声もある。三上さんは「情報は流出しないが、『かけ直してくれる人だ』と狙われ、何度も電話がかかってくる場合がある」と話す。かけ直さず放置しておけば問題なさそうだ。

■「被害の報告なし」
 福岡県警によると、県内でアセンション島からの国際電話に関する相談や詐欺被害の報告は21日夕時点で確認されていないという。

 電話による詐欺被害を未然に防ぐためにはどうすればいいか。詐欺被害の予防や啓発に取り組む県警生活安全総務課は「まず知らない番号や発信地からの不審な電話には出ないこと」と呼び掛けている。不審な着信が残っていたら、かけ直す前に身近な人や警察に相談することも大切だ。(黒田加那)

PR

社会 アクセスランキング

PR

注目のテーマ