防災・減災教育 「命」守る教訓を伝えたい

西日本新聞 オピニオン面

 風水害、地震、火山噴火など大規模な自然災害が毎年のように日本列島を襲っている。台風19号が先月もたらした被害の甚大さは、昨年の西日本豪雨や一昨年の九州豪雨の記憶さえ遠のかせるほどだ。

 それでもなお、私たちの心のどこかに「大災害は特定の地域に起きる特別な出来事」という意識はないだろうか。そうはいかない厳しい現実が目の前にある。日常の備えはもちろん、子どもたちへの防災・減災教育はさらに重要になっていく。

 九州の学校での防災教育は、長崎県の雲仙・普賢岳大火砕流(1991年)による大野木場小学校の校舎焼失を機に強化されてきた。

 熊本地震(2016年)を経験した熊本県は防災教育の手引をまとめた。熊本地震の特徴やメカニズムに加え、自分の命を守り、互いに助け合う精神を具体例から学んでいる。

 全国的には東日本大震災(11年)を受け、文部科学省の有識者会議が子どもの発達段階に応じた防災教育を提言した。ただ現段階は教科・科目ではなく、総合的な学習の時間や特別活動で教えるほか、社会や理科で学ぶ内容に関連付けて取り上げている。これからも、それで十分なのだろうか-。災害の現実に照らしつつ、教育の現場から議論を積み上げたい。

 台風や大雨の予報は精度が高まるだけでなく、その表現の仕方も平易になってきた。子どもが自分で危険を認識する力を育みやすい環境は生まれている。分かりやすく体系的に学習できる工夫も求められよう。

 特に重要なのは、自分に近い地域で実際に起きた災害を詳細に学ぶことだ。被災地の惨状や傷痕ほど説得力のある防災の教科書はないだろう。

 家屋はいかに倒壊し、避難所にはどうやって逃げ、人々はどう助け合い、復旧・復興の道のりを歩んだか。自分らは今後、どのように防災・減災に取り組むべきなのか。全てのヒントがそこにある。

 東日本大震災で津波に襲われた岩手県釜石市に「命てんでんこ(命はめいめいが守る)」と呼ばれる伝承が生きた好例がある。地震が起きたら迷わず各人が高台に逃げようという訓練が実を結び、当日は学校管理下の小中学生2900人余が避難して無事だった。

 一方、宮城県石巻市の大川小では津波で児童70人が死亡し、4人がなお行方不明だ。裏山があるにもかかわらず、浸水想定区域外だったことなどから、高台に逃げることが教師にも徹底されていなかった。

 悲劇を繰り返さぬためにも命を守る教育を強化したい。

PR

社説 アクセスランキング

PR

注目のテーマ