2004年の元旦、カトリックの総本山…

西日本新聞 オピニオン面

 2004年の元旦、カトリックの総本山、バチカンのサンピエトロ大聖堂を訪ねた。ローマ教皇ヨハネ・パウロ2世(05年死去)の新年のミサが予定されていた。その言葉をじかに聞きたかった。被爆地の長崎、広島を初めて訪問した教皇だったから

▼大聖堂正面の広場には早くから多くの人が。欧州、米国、アジア、中南米、アフリカ…。さまざまな文化や言語、肌の色の人々だった

▼その頃はまだ米中枢同時テロイラク戦争の衝撃が生々しく、不安が世界を覆っていた。教皇は「平和の実現は可能です。私たちの義務でもあります」と語り掛けた。その言葉は、対立や憎しみを白く染める雪のように胸に降り積もり、参列者は皆、心から平和を願った

▼ヨハネ・パウロ2世の訪日は1981年。東西両陣営が核兵器を構えてにらみ合う冷戦のただ中だった。被爆地で原爆犠牲者に祈りをささげた教皇は「戦争は人間の仕業です」と述べ、核兵器廃絶を訴えた

▼その思いを受け継いだ現教皇フランシスコがきょう、長崎と広島を訪れる。冷戦は終わっても核廃絶は遅々として進まない。フランシスコは被爆後の長崎で撮影された一枚の写真をカードにして配った

▼弟の遺体を背負い、唇をかんで火葬の順番を待つ少年。その悲しみを、核の非人道性を、教皇はどんなメッセージで被爆地から世界に発するだろうか。胸に降り積もるであろう言葉に耳を傾けたい。

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