ローマ教皇「核は守ってくれない」 長崎爆心地から発信

西日本新聞 総合面 華山 哲幸 徳増 瑛子

 ローマ教皇(法王)フランシスコは24日に長崎の爆心地で発したメッセージで、安全保障を核兵器に頼ろうとする保有国や核の傘の下にいる国々に向けて、「核兵器は私たちを守ってくれない」と明確に宣言。核は人と人との関係をむしばみ、相互の対話を阻むと位置付けた。13分かけて読み上げた言葉では、現状を「相互不信」、あるべき姿を「相互の信頼」として、対話の重要性を説いた。

 これまでも一貫して核に関する積極的な発言を続けてきた教皇だが、7万人余の命を奪った爆心地に立ち、核兵器廃絶に言及した意義は大きい。

 冷戦終結の象徴だった米ロの中距離核戦力(INF)全廃条約は今年8月に失効した。米トランプ政権は核弾頭小型化による「使いやすい核兵器」の開発に注力。核拡散防止条約(NPT)を5年に1度見直す再検討会議が来年4月に迫っているが、合意文書の採択は危ぶまれている。地球最後の日までの時間を概念的に示す「終末時計」は、旧ソ連が水爆実験に成功した1953年と並び、最短の「2分」に迫った。

 教皇のメッセージからは、こうした現状に対する強い危機感が浮かぶ。「国際的枠組みの崩壊」「多国間主義の衰退」「兵器の技術革新」…。国名こそ出していないが、米ロをはじめとする核保有国を念頭に置いているのは間違いない。

 緊張関係の背景には「国同士の相互不信」があり、解決策として「信頼関係の構築が重要」と何度も説いた。原爆をテーマにした著作が多い作家青来有一さん=長崎市=は、損得抜きに心に訴えようとする宗教者らしい言い回しに「人間の深い部分への呼び掛けが感じられる」と分析する。

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 さらに教皇は、社会問題や信仰について述べた書簡「回勅(かいちょく)」で、歴代教皇が核廃絶について言及した部分もメッセージに引用した。

 <軍備の均衡が平和の条件であるという理解を、真の平和は相互の信頼の上にしか構築できないという原則に置き換える必要がある>。これが世界のカトリック信者13億人の総意であると明確にすることで、各国の指導者に対し強く迫る思惑も見える。

 また、核の悪質性について、非人道性という観点にとどまらず、「環境にも悲劇的な結末をもたらす」と言及している点は新鮮だ。青来さんは、過去の出来事と捉えられやすい原爆投下を環境破壊とつなげることで「将来、実際に起こり得る未来として若い世代に考えてもらえるようになるのではないか」と考える。

 メッセージの冒頭を「この場所は-」で始め、長崎の爆心地に立っていることを強調した教皇は、演説を締めくくる部分でもあらためて、同じキーワードを用いて訴えた。

 「この場所」は「私たちをはっとさせ、無関心でいることを許さない」、そして「私たち(人類)が真の平和の道具となる」ことを勧めている、と。

 この点に込められた思いについて、長崎大核兵器廃絶研究センターの鈴木達治郎副センター長はこう推察する。「被爆地を訪れた全員が核兵器廃絶に向けて行動する必要性を促している」 (華山哲幸、徳増瑛子)

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