特定場面に苦手意識持つ子ども 菊池良和(九大病院・吃音外来医師)

西日本新聞 医療面

吃音~きつおん~リアル(8)

 吃音(きつおん)のある子どもたちは、特定の場面で話すことに苦手意識を抱き、悩んでいるケースがあります。

 ある小学5年男児の例を紹介します。男児は毎日の朝の会での健康観察の時間、不在が目立ちました。担任の先生は「トイレに行っているんだろうな」と軽く考えていました。

 このクラスの健康観察は、児童同士で質問し合うやり方でした。出席番号の早い児童から順番に、次の番号の児童に「〇〇さん、どうですか?」と問い掛け、「はい、元気です。△△さん、どうですか?」と続けていきます。声が小さいと、先生が「聞こえない。もう一度」と注意し、やり直させていました。

 男児は10日連続でこの時間に姿が見えませんでした。さすがに先生は理由を尋ねました。答えは「健康観察で声が出なくて注意されるのが怖いから、トイレに行っていた」。先生が親に電話すると、親も悩みに気付いておらず、男児は1人で苦しんでいたことが分かりました。

 「はい、元気です」。ごく簡単な短いフレーズで、みんな言えて当たり前。しかし、吃音の調子により、うまく言えなかったり、言うのに時間がかかったりする子がいるのです。

 何度か言葉が出ずにつらい体験をすると、同じ場面でマイナスの感情が呼び起こされるようになります。そして、その特定の場面が怖くなったり、苦手になったりします。

 この男児に関しては、「健康観察」という特定の場面が苦手だと担任の先生が把握し、児童同士での健康観察をやめました。これだけで、男児は健康観察の時間も教室にいることができるようになりました。

 吃音専門の医師である私は、吃音のある児童と話すとき、必ず健康観察について聞くようにしています。日直の号令、音読、九九のテスト、学習発表会なども同様です。学校生活には、吃音の子どもが困り感や苦手意識を抱きがちな場面がたくさんあり、周囲の細やかな配慮を必要としています。 (九州大病院医師)

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