反政府感情、民主派後押し 中国、圧力強化を示唆 香港区議選

西日本新聞 総合面 川原田 健雄

 【香港・川原田健雄】香港の区議会(地方議会)選挙で民主派が歴史的勝利を収めた。政府への抗議活動が5カ月以上続く中、高まる市民の反政府感情が躍進の追い風となった。厳しい民意を突き付けられた香港政府は「選挙結果を尊重する」(林鄭月娥行政長官)と強調するが、柔軟姿勢に転じるかは不透明。中国政府はデモ隊への強硬姿勢を保ちつつ、国際社会の反応を見極める構えだ。

 「夢みたい。とても現実とは思えない」。25日午前1時前、香港島・湾仔区の開票所。民主派の新人、羅偉珊氏(32)は当選を伝えられると、歓声を上げて涙ぐむ支援者と抱き合った。親中派が20年以上議席を守ってきた選挙区だが、今回は政府に反発する若者らが多数投票。羅氏は「高い投票率が勝たせてくれた」と満面の笑みを浮かべた。

 選挙前、民主派は過半数獲得を目標に掲げたが「楽観的すぎる。前回より議席が増えれば勝利だ」(民主派の立法会議員)と慎重な見方も多かった。しかし、ふたを開ければ予想を大きく上回る圧勝。初当選した民主派の梁凱晴氏(25)は「勝てると思っていなかった。市民が政府への抗議の意思を示した」と語った。

 ただ民主派の総得票数は全体の約6割にとどまった。6月以降、抗議活動に参加してきた男子大学生(19)は「デモ支持は思ったより広まっていない」と分析。2014年の民主化デモ「雨傘運動」を率いた周庭氏は「区議選の勝利は目標ではない。民主主義の実現や香港の自由のために運動を続ける」と強調した。

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 一方、区議会の多数派から転落した親中派には動揺が広がった。「まるで天地がひっくり返ったよう。異常な選挙だ」。落選した親中派の何君尭氏(57)はフェイスブックの投稿でショックをあらわにした。

 選挙戦中、逆風にさらされた親中派からはデモ激化を口実に選挙延期を求める声が上がったが、香港政府は予定通り実施した。「先送りすれば国際社会の批判は避けられない。親中派が多少議席を減らしても選挙を実施して『一国二制度が機能している』とアピールした方がいいと判断したようだ」。区議選候補の一人は政府の狙いを推測した。

 ただ、想定を超える親中派の大敗が政権運営に影響を及ぼすのは必至だ。政府トップの林鄭長官に対しては親中派からも更迭論が噴き出している。

 行政長官を選ぶ選挙委員会1200人のうち117人は区議から選出され、今回は大勝した民主派から区議枠の全員が選ばれる見通しだ。民主派が行政長官選挙への影響力を強める事態に、中国政府が懸念を深めているのは間違いない。

 10月に開かれた中国共産党の重要会議では、中国政府による「香港管理の強化」が強調された。選挙委員会による選挙すら経ずに行政長官を任命できるようにするなど、中国政府がより直接的に統治に関わり、香港の「高度な自治」が縮小する恐れもある。

 「香港政府や北京(中国政府)はもっと強力な手法でデモを抑えようとしてくるだろう。民主派は今回の勝利で油断してはならない」。政治評論家の劉鋭紹さんは指摘した。

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