あなたの税金です 山口 卓

西日本新聞 オピニオン面 山口 卓

 給与明細を開くと「控除」の欄に天引きされた税の項目が並んでいる。所得税、住民税…。税金とは社会全体を支えるお金であり、日本で生活するための「会費」のようなものだ。地震や台風など災害からの復興支援、高齢者や子どもたちも安心して生活できる環境づくり。私の払った税金を、ぜひ有益に使ってもらいたい。

 と思っていたら「桜を見る会」である。

 安倍晋三首相は地元後援会から約850人を招待し、写真撮影や飲食を提供。税金による事実上の「接待」の場となっていた。首相夫妻が人選に関与していたことも判明。招待客約1万5千人のうち、約8千人が政府、自民党の関係者だったことも分かった。

 桜を見る会の今年の支出額は約5500万円。本年度の一般会計予算額は約101兆4571億円なので0・00005%程度にすぎない。自民党議員や支持者からは「大したことではない」という声が聞こえてくる。だが、問題は金額の大小ではない。

 私たちは選挙で選んだ国会議員に政府を指揮し、国会で予算の使い方を決める権限を付与している。それは集めた税金を公平・公正に分配するという「信頼」があるからこそ成り立っている。その土台が揺らいでいるのだ。

 「もっと議論すべき政策があるだろう」。こうした声も目立つ。確かに被災者はまだ避難生活を強いられているし、日韓外交も混迷の真っただ中だ。だが、どちらが重要かと比較する話ではない。桜を見る会は代表制民主主義の前提を崩す問題だ。徹底して実態解明する必要がある。

 「民主党政権時代もやっていた」。これもよく聞くが、スピード違反で摘発された人が、他の人も違反していると主張するようなもので、それで自分の行為が正当化されるわけではない。

 それでも国会では、首相の招致を自民党がかたくなに拒んでいる。招待客の実態を把握しようにも、政治枠の名簿は野党議員が内閣府に資料提出を要求した5月9日にタイミングよく大型シュレッダーにかけたらしい。これが官僚の仕事かと思うと「せ(す)まじきものは宮仕え」。主君への忠義と道徳心との間で苦しむ歌舞伎の名ぜりふが浮かぶ。

 「パンとサーカス」。古代ローマは食べ物と娯楽を与え、大衆の政治への不満をそらした。首相は桜を見る会で何を与え、そして何が失われたのか-。

 忘れてはならないのは、その「接待」に使われたのはあなたが払った税金だということだ。 (政経部次長)

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