災害乗り越え希望の味 福岡・朝倉の富有柿

西日本新聞 夕刊

 晩秋の里山に広がる橙(だいだい)色の点描。日本有数の甘柿の産地、福岡県朝倉市で、甘さと食感、そしてそのボリュームから「甘柿の王様」と称される富有柿(ふゆうがき)の収穫作業が最盛期を迎えている。

 「寒の入りが遅く、色づきこそ遅れたが、味は良い」。鮮やかな秋の夕日のように赤く色づいた柿を手に、満足げな表情を浮かべる、JA筑前あさくら柿部会(361人)の井上敏朗さん(64)。つややかな実の表面に、うっすらと白い粉が浮いている。

 「乾燥などから実を守ってくれるしろこ。ブルームともいうけど、新鮮さの証しなんじゃ」。その実をかじると、サクサクした歯応えとともに、爽やかな甘みが口の中いっぱいに満ちあふれた。

 2年前の九州豪雨で甚大な被害に遭った杷木地区の赤谷川流域。井上さんの60アールの柿畑にも、容赦なく土砂が流れ込んだ。撤去が遅れると根が窒息し木が枯死してしまう。

 18歳で柿園を継いだ井上さん。「先代と植えた柿を一本でも多く残したい」。ボランティアの手を借り、必死で泥をかき出した。しかし畑に通じる道路が寸断されるなどして栽培面積は半分に。さらに鳥獣害の追い打ちも…。

 この2年間「来年こそは」と歯を食いしばり、妻ながえさん(61)と、明日への希望をつないできた。朝倉地域の復興は、農業の再生なしにはあり得ない。ぜひ朝倉の柿を食べて、贈って、ご支援を。(堀米千恵)

 ▼富有柿 12月中旬まで、福岡県朝倉市と筑前町の直売所などで。1玉100~200円前後。贈答用はJA筑前あさくら中央選果場で3L15個3500円、2L18個3千円。同選果場=0946(23)8340。

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