アジフライの聖地に 調川駅

西日本新聞 佐賀版長崎・佐世保版 福田 章

松浦鉄道 ひと巡り(8)

 昔は石炭の積み出し、今は「アジフライの聖地」の玄関口。調川(つきのかわ)駅(松浦市)は大きな変容を遂げた。

 石炭の時代が終わり、往来する人がめっきり少なくなった調川は1970年、無人駅になった。79年、そばに松浦魚市場が開設。松浦鉄道が3年前に設置した「日本一のアジ・サバ水揚げ基地」の駅名標示板だけが、寂しいホームで目立っていたのだが-。

 「アジフライ五つ!」

 魚市場内の西日本魚市食堂は曜日を問わず、アジフライ定食目当ての客が詰め掛ける。元気な声で次々と注文を伝えるのは、おかみの坂本義江さん(66)。「今日はあと二つしかなかよ」と厨房(ちゅうぼう)から申し訳なさそうな声が返ってきた。

 松浦市は大型連休初日の4月27日、「アジフライの聖地」を宣言した。自慢のアジを庶民の料理でPRする戦略は大当たりだった。

 西日本魚市食堂は34年前に市場内で開店し、昨年6月から新築された事務棟1階で営業。坂本さんは市場で働く常連客から「母ちゃん」と慕われている。

 「市場が変わって、こがん忙しゅなるとは思わんやった。毎日毎日、アジフライがよう出るとよ」

 「うちんとは太かけんね。サクサクしておいしかっちゅうて、福岡やら下関やらからわざわざ食べに来てくれて、感激して帰らす。午前中で売り切るっこともあって、そがんときゃ、お客さんに気の毒ぅしてね」

 まさにうれしい悲鳴。病を乗り越え、働く喜びをかみしめながら60席の店内を駆け回る。

 松浦市のアジフライ地図に掲載されている飲食店や旅館は29軒。ある店は大型連休向けに用意していたアジ千枚が、数日を余して売り切れた。市地域経済活性課の担当者は、観光客の増加を肌で感じている。

 この人気を一過性のブームで終わらせまいと、市職員の有志15人は「揚げアゲミーティング」を8月に立ち上げた。新企画の第1弾は、10月の松浦水軍まつりの来場者に投票してもらった「アジフライに合うソース選手権」。1位に輝いた「アジフライ南蛮タルタルソース」の活用方法を検討している。

 松浦市志佐町でカフェを営む松尾秀平さん(34)は、水軍まつりでアジフライサンドイッチを販売。好評だったので、近く店のメニューに加える予定だ。

 調川駅と至近の松浦魚市場が支えるアジフライの聖地。関係者の情熱は四方に飛び火し、松浦市の認知度をジュジューッとアゲる。 (福田章)

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