島との往来支え続け 福島口駅

西日本新聞 佐賀版長崎・佐世保版 古賀 英毅

松浦鉄道 ひと巡り(9)

 午後6時20分、松浦鉄道(MR)福島口駅(伊万里市)に1両編成の列車が入った。制服姿の高校生6人が降りると足早にホームを過ぎていく。100メートルほど先の浦ノ崎港へ。そこに待つ船は「つばき2」。伊万里湾に浮かぶ福島に渡る。

 「待ち時間がほとんどないから便利です」。鹿町工業高(佐世保市)の2年、前田俊輔さん(17)は笑う。平日は夕方に福島口駅で降り、渡船を使って福島の自宅に戻る。

 港と同じ名の「浦ノ崎」の駅は福島口駅の隣駅だ。1988年にMRが開業したとき、福島口駅はなく、港の最寄り駅は浦ノ崎駅だった。だが、港までは600メートルほど。「子どもたちが登下校で雨にぬれるとかわいそうだから、みんなで駅をつくってくれって要望してね」。船を運航する金子廻漕店の2代目社長、金子義美さん(78)は当時を振り返る。開業から2年後、福島口駅は開設された。

 半世紀以上にわたり、ここから船で福島に人を渡してきた。金子廻漕店は54年に先代が開業。福島と伊万里市を結ぶ福島大橋が67年に開通するまで、島に渡る唯一の手段が船だった。

 岸壁近くの店内の壁には、船の時刻表とMR福島口駅の時刻表が並ぶ。平日は午前6時5分から午後7時まで浦ノ崎港と福島を8往復。長男の正二郎さん(52)や船長歴32年の橋本正さん(67)ら3人で交代しながら船を動かす。

 福島に通勤したり、伊万里の病院に通ったりするお年寄りたちも乗るが、高校生が便利なように登下校に合わせてダイヤを組む。ただ、通学定期利用者も、福島口駅ができた約30年前は30人ほどいたが、今では6人しかいない。

 過疎に少子化。それだけではない。湾に隔てられた市の東西を結ぶ伊万里湾大橋が2003年に開通したことで車での交通の便が高まり、駅や学校まで子どもを車で送迎する姿も目立つようになった。

 船の定員は70人だが、乗客はまばら。正二郎さんは「かつては船の航路が福島の大動脈だったけど寂しいね」。ただ、やるべきことは変わらない。午前5時に起き、船を点検し、第1便を出す。運航を終え、午後7時半ごろ終業し、眠りに就くのは翌午前0時に近い。次の日もまた船を出す。

 「お世話になりました」

 春の訪れを感じさせるころ、卒業式を迎えた生徒に声を掛けられる。その言葉が支えになる。 (古賀英毅)

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