薬物鑑定は時間との闘い 脇川憲吾さん 【連載・科捜研のリアル❸】

西日本新聞

 Q 最新機器や知識を持つ科学捜査研究所(科捜研)にも手ごわい相手がいますか?

 「そんなものはありません!と言いたいところですが…。法規制しても次々と新たな物が生まれてくる危険ドラッグとのいたちごっこは難しい闘い。常に目を光らせています」

 「あなたの特命取材班」に寄せられた質問にそう答えてくれたのは、薬物鑑定を担う「化学第1科」の脇川憲吾さん(44)。芸能人の薬物使用による逮捕が起きると注目される部署だ。

 一言に薬物鑑定と言っても、扱うのは覚醒剤や麻薬、危険ドラッグなど違法な物から、睡眠薬や家庭用の漂白剤まで幅広い。

 例えば、福岡県内でも、睡眠薬などの入った酒を飲まされ、強盗や性被害に遭った事件が発生。脇川さんたちはグラスに残された酒の鑑定だけでなく、被害者の尿などを調べてそれぞれの薬物を特定し、有罪の決め手となる証拠にした。

 ◆前処理作業こそ肝

 化学成分を分析するのは、専用マシン「質量分析装置」。ただ、試料となる血液や尿を、そのまま機械に入れて終わり-というわけにはいかない。

 実際の現場では、鑑定の対象となる尿や血液1ミリリットル当たりに、薬物は1ナノグラム(ナノ=10億分の1)程度しか入っていないことも多い。

 血液にはタンパク質や脂質、尿には水分や電解質(イオン)など薬物以外が多く含まれる。このような複雑な混合物の中から、分析を妨害する成分を可能な限り取り除き(前処理作業)、分析対象である微量の薬物を正確に検出しなければならない。「前処理こそ鑑定の肝。薬物の体内での動きや特性、変化の知識が欠かせません」

 時間との闘いでもある。福岡県警科捜研に持ち込まれる鑑定依頼のうち、最も多いのが覚醒剤使用の容疑者の尿鑑定。警察官が逮捕時に使うのは、色で薬物反応を見る「簡易鑑定」。その後の「本鑑定」が科捜研の仕事で、起訴や裁判の重要な証拠となる。

 多い日には県内全域から10件以上の本鑑定依頼が寄せられる。容疑者が逮捕された後、検察庁へ身柄を送る送検までのリミットは48時間。「休みの日に呼び出されることもあります」と脇川さんは明かす。

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