長崎新幹線 まずは信頼の土台つくれ

西日本新聞 オピニオン面

 年末に向けて国の2020年度予算編成が本格化するが、九州新幹線西九州(長崎)ルートの整備は政府、与党の方針通りには進みそうもない。

 同ルートのうち長崎-武雄温泉は通常の新幹線「フル規格」の建設工事が22年度の開通を目指して進んでいる。

 だが武雄温泉から鹿児島ルートの新鳥栖を結ぶ区間は、事業主体4者のうち国土交通省、長崎県、JR九州の3者と佐賀県の意見が合わず、協議すらできない状態に陥っている。

 最大の焦点は武雄温泉-新鳥栖もフル規格で整備するかどうか。地元の同意がなくては国交省も関連予算の計上は難しい。

 長崎から新鳥栖までの全線をフル規格とする案は与党が8月に了承し、俎上(そじょう)に載った。佐賀県が反発する理由は、660億円とされる建設費の地元負担に見合うメリットが乏しい点や、新幹線開通後の並行在来線の減便など地元への悪影響の懸念が拭えないことがある。

 何より、武雄温泉-新鳥栖のフル規格での整備はこれまで正式には検討したことがない。「フル規格ありきの協議には参加できない」という佐賀県の主張には一理あるとも言える。

 確かに4者が合意したのは武雄温泉駅で在来線と新幹線を乗り換えるリレー方式だ。車輪の間隔を変えてフル規格と在来線の双方を走れるフリーゲージトレインの開発が頓挫し、一足飛びにフル規格へとの話に応じよというのはやはり強引だろう。

 まずは3者の側が、佐賀県が話し合いに参加できる環境を整えるべきだ。4者が合意できているのがリレー方式までだとすれば、その妥当性や将来展望といった点から議論を積み上げてはどうか。フル規格を論じるためには信頼の土台が必要だ。

 一方の佐賀県も、正式な場で自らの立場をきちんと説明すべきだろう。地元負担のあり方や並行在来線の問題も、4者が協力しなければ一歩も前には進まない。長崎-武雄温泉の開通が迫る中、4者がまともに協議すらできないという現状は早期に解消しなくてはならない。

 九州の今後に観光産業の発展は極めて重要である。訪日外国人が増え続けており、関西をはじめ全国と新幹線でつながる意義は長崎に限らず佐賀にも小さくない。九州全体の視点で見れば、長崎ルートのあり方は長崎と佐賀だけの問題ではない。

 西日本新聞社が今月催した交通インフラがテーマのシンポジウムでは、高速交通社会を迎えて、県民意識ではなく「九州人意識」が求められるとの声も出た。長崎ルートの問題は九州地方知事会や九州経済連合会も積極的な役割を果たしてほしい。

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