聞き書き「一歩も退かんど」(31) 女性パワー 原告団結 志布志事件冤罪被害者 川畑幸夫さん

西日本新聞 オピニオン面 鶴丸 哲雄

 2003年秋以降、私と妻順子が営む「ビジネスホテル枇榔(びろう)」は、志布志事件の闘争拠点になっていきました。ホテルの食堂はたびたび記者会見場に。新聞記事やビラを大量にコピーしては、訪れる支援者や街頭で市民に配りました。

 そして、裁判の日の朝は40~50人がホテルに集合します。貸し切りバスで片道2時間ほどかけ鹿児島地裁へ公判を傍聴に行くのです。やがて裁判所の職員が「きょうは何人ですか」と尋ねてきて、人数分の長椅子を傍聴席に準備してくれるようになりました。

 にぎやかなのがお昼の休廷時間。近くの公園にござを敷き、持参した弁当に舌鼓を打つのです。まるで花見客のような一団がオフィス街の一角を陣取ります。道行く人はじろじろ見ますが、そうやって私たちの絆は強まっていきました。

 志布志事件の被告は、病気療養中の永利忠義さんが在宅で後から起訴され計13人。逮捕されたものの起訴されなかった人が私を含め3人。逮捕も起訴もされなかったものの、強引な取り調べで被害を受けた人が少なくとも6人いました。

 これらの人と家族、弁護士、支援者が固く結び合ったのが志布志事件の原告団です。その特長は、私の妻を引き合いに出すまでもなく、女性がパワフルなことでした。

 中でも、起訴された山下邦雄さんの妻、カズエさんは気丈な方でした。邦雄さんは、勾留が長引いて育てていたニワトリが全滅するのを恐れ、ありもしない罪を認めてしまいました。

 これに怒ったのがカズエさんです。03年7月23日の公判で買収会合を認めた邦雄さんを、傍聴席からしかり飛ばしました。そのせりふは新聞的にはどうかと思うのですが、思い切って原文通り紹介しますね。

 「うんがーっ、うそばっかり言うと、金玉ひっちぎっどーっ」

 さらには、「黙れー」と威圧してきた検察官に対し、「何もしちょらんのに。おまえが黙れ!」。この一喝に邦雄さんも目を覚まし、事件は全員否認で足並みがそろっていくのです。

 また、懐(ふところ)集落で簡易郵便局長を務めていた被告の永山トメ子さんもしっかりした方で、厳しい取り調べに頑として否認を貫きました。私と同様に留置場で全裸の身体検査をされたことをずっと怒っていました。「なんで人間があんなことされにゃいかん。なんぼ年取っても忘れることはできん」。全くその通りです。 (聞き手 鶴丸哲雄)

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