時の権力者が意に沿わぬ言論を封じようとするのはいつの世も…

西日本新聞 オピニオン面

 時の権力者が意に沿わぬ言論を封じようとするのはいつの世も。江戸時代は幕政批判はもとより、当時の武家社会に関わる出来事を芸術や娯楽作品に取り上げることも禁じられた

▼赤穂藩主の刃傷沙汰と家臣の討ち入りを題材とした「忠臣蔵」。浄瑠璃や歌舞伎では室町時代の話に置き換え、主人公の名は大星由良之助に。実名の大石内蔵助が使えるようになったのは明治以降だとか

▼設定を変えても、観客は赤穂事件のことだと分かる。太平の世に甘んじ、忠義や誇りをなくした武士階級への皮肉が込められていることに、庶民は喝采を送ったのだろう

▼天保の改革以降、ぜいたくや風俗の乱れに対する取り締まりがさらに強化され、舞台や出版物はしばしば弾圧された。だが、規制が厳しくなるほど、作品に風刺や諧謔(かいぎゃく)をしのばせたくなるのが反骨の芸術家魂か。福岡市博物館で開催中の「挑む浮世絵」展にもそんな作品が

▼歌川国芳の「源頼光公館土蜘(つちぐも)作妖怪図」。頼光と部下がくつろぐ背後で妖怪たちがうごめく。改革を断行する為政者と、苛政に苦しむ庶民を表していると騒ぎになった。弟子の月岡芳年が関ケ原の合戦に仮託し、彰義隊の旧幕臣と官軍が戦った上野戦争の惨状を描いたとされる作品も見られる

▼権力や政治を堂々と批判できる今の世は幸せ…と言いたいが、言論や表現の自由を巡る昨今の動きを見れば、胸を張って言い切れるかどうか。

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