「日韓の根源」問う一冊 小出 浩樹

西日本新聞 オピニオン面 小出 浩樹

 韓国とは一体どんな国なのだろう…。

 日韓関係の悪化に比例するように、それまで関心が薄かった人でも知的欲求に突き動かされているように思う。

 必然的に問題意識は、朝鮮半島を植民地支配した時代に、日本は一体何をしたのかという点に向かう。

 その疑問の答えの一つとなる「反日種族主義~日韓危機の根源」(文芸春秋)が今月半ば、書店に並んだ。李栄薫(イヨンフン)・ソウル大元教授など韓国の経済学者ら6人が、あの時代の分析を土台に、韓国に根強い反日思想を「事実に基づいていない」と非難している。

 出版の1カ月前、私は日本人シニア女性の会合で、今の韓国について卓話をする機会があった。その際、早くも同書を巡る質問が出たのには驚いた。原書は既に7月に韓国で出され、10万部を超えるベストセラーになっていることを、一部報道で知ったのだという。折も折である。両国でこれほど同時に注目を集める書物は多くない。

 著者らの師匠、安秉直(アンビョンジク)・ソウル大名誉教授は物静かな日本語で、かつて私の取材を受けてくれた。

 韓国の経済近代化の萌芽(ほうが)は、日本統治時代に生まれたとする学説の先駆者である。一方的に日本から収奪されたとする韓国主流の学説に批判的だ。「私たちは証明できないことは言いません」との前置きで話は始まった。「日本は朝鮮支配のために鉄道や学校をつくり、農業を発展させた。朝鮮人も積極的に近代化に力を注いだ。ここが重要です」「もちろん日本が何一つ奪っていないとは言えません」

 当時を美化も暗黒化もしない。そもそも研究の出発点は、各国の経済近代化の過程を分析することだったという。

 さて、書名にある「種族」とは聞き慣れない言葉だ。親族を中心にした一族とでも解釈するべきか。

 確かに韓国では「金(キム)」や「鄭(チョン)」など日本の氏にあたる本貫(ほんがん)(一族発祥の地名)は、アイデンティティーを決定付ける重要な要素だ。書名の意味は、日本との根源的な差異が対立の底に横たわるということなのだろうか。

 同書ではデータは示しつつ感情的とも言える表現も、残念ながら一部に見られる。それでも、いわゆる元徴用工の実態を探る論考(李宇衍(イウヨン)・九州大元客員教授)などは極めて新鮮だ。

 異文化を知ることは「相いれない部分もある」という事象を受け入れることでもあると思う。そうした観点からも興味深い著作だ。内容の当否は当然、読者一人一人の判断に委ねられる。 (論説委員)

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