米中の対立激化 日本は傍観者でいいのか

西日本新聞 オピニオン面

 中国に「香港の自治」の順守を迫る米国の「香港人権・民主主義法」(香港人権法)がトランプ大統領の署名を経て成立した。中国は「内政干渉だ」と猛反発し、報復措置も辞さない構えだ。一連の貿易摩擦と相まって米中の対立は今後一段と先鋭化し、緊張がさらに高まりかねない情勢だ。

 米中両国には対話を維持し、報復合戦に陥らぬように冷静な行動を促したい。特に中国は、この事態を招いた自らの責を省みるべきだ。他方、米国は台頭著しい中国を「米1強」への挑戦者と捉え、露骨な封じ込め戦略に動いた印象も強い。それが奏功するのか、米国側にも慎重な見極めが必要だろう。

 香港人権法は、香港の高度な自治を認めた「一国二制度」が損なわれていないか、米政府に毎年の検証と議会への報告を義務付けている。自治が揺らいでいる場合は香港への貿易上の優遇措置を見直したり、人権侵害に関わった当局者に制裁を科したりする措置を認める内容だ。

 注目すべきは、この法案が米議会の超党派による圧倒的な支持で上下両院を通過し、トランプ大統領に事実上、拒否権発動の余地を与えなかった点だ。

 言い換えれば、今回の対中強硬策はトランプ氏の外交戦略を超えた「米国の総意」であり、その分、中国が受けた衝撃も大きいはずだ。中国は先の香港区議選における民主派の大躍進も受け止め、香港ひいては中国本土でも民主化の推進、人権状況の改善に踏みだすべきだ。

 一方、気になるのは日本の対応だ。安倍晋三政権は香港の混乱に「憂慮」の意を示すにとどまっている。来春の習近平・中国国家主席の公式訪日を控え、中国への刺激を避ける思惑からだろう。日中間で首脳往来が復活し、関係改善の機運が生まれていること自体は歓迎したい。

 しかし、現下の香港情勢や米中対立の中で、習氏を国賓とすることには疑問の声もあり、関係改善をアピールするのは容易ではなかろう。そこで提起したいのは、習氏を招くにしても、今の日本が米中と向き合う立ち位置を明示することだ。

 米中対立の仲介役を務めるにしても、中国とは経済面で戦略的互恵関係を維持しつつ習指導部の強権的政治姿勢は断じて是認しない。また、日米同盟は堅持しつつ国際協調に背を向けるトランプ外交には決してくみしない-として、毅然(きぜん)と米中と渡り合う外交姿勢である。

 首相在職日数が史上最長に達した安倍首相は、外交が得意分野だと自負してきた。その真価を示す意味でも、米中対立を遠目に見るだけの傍観者であってはなるまい。

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