「身心一如」胸に修行積む 剣道教士八段、大内康典さん

西日本新聞 大分・日田玖珠版 鬼塚 淳乃介

 「試合だと思って練習すれば、本番で緊張することはないんだ」。心と体は分けることができないという道元の言葉「身心一如」が掲げられた昭和学園高(日田市日ノ出町)の道場。剣道部顧問の大内康典さん(51)が生徒に静かに語りかけた。普段は気さくな人柄も面をかぶると一変。鋭い気合で竹刀を振り抜く。今年5月、合格率0・89%の難関を乗り越え最高位八段に昇段した。挑戦2年目での合格は快挙。だが道のりは平たんではなかった。

 日田市中津江村出身。自然の中で体を動かすことが大好きな子どもだった。剣道をしていた隣家のお兄ちゃんに憧れ、小学1年で始めたが当時は「陸上や野球などいろんなスポーツの中の一つ」だった。進学した日田高の剣道部ではレギュラーになれず、「部をやめよう」と心に決めた2年のとき、直後の県大会で同高はベスト16で敗退。控えなのに悔しさで涙が止まらなかった。「このままでは終われない。強くなりたい」。この思いが剣道を極める大内さんの原点となる。

 大学は高校の恩師の母校で当時日本一練習が厳しいといわれた大阪体育大に。午前5時半からの朝練3日も含め“週10日”の厳しい練習が始まった。真冬の寒稽古は約2週間休むことなく続き、最後は腹に力が入らず声が全く出ないほど。友人と励まし合い4年耐え抜いた。「基礎、基本を体にたたき込み、本当の剣道とは何かということを知った。この4年がなければ今の自分はなかった」

 卒業後は「優しく見守り育ててくれた日田への恩返し」「剣道を通じて社会に貢献できる人材を育てたい」との思いで帰郷。市内の中学校などで教壇に立ちながら剣道を教えた。36歳で昭和学園高に移り、14年間で同高剣道部を九州高校選抜大会に6回導くなど指導者としての頭角も現した。指導の合間に自身の腕も磨き、38歳で当時合格率5%ほどだった七段に一発合格。まさに心身は充実し剣の道は順風満帆にも思えた。

 全日本剣道連盟の規則では、八段の審査を受けるには「七段昇段から10年間修業した46歳以上の者」であることが必要。合格にはさらに高い技量と、風格・品位なども求められる。

 年々教員の仕事も忙しくなる中、10年間じっくりと修行を積み、ようやく受審できるという矢先、長年の無理がたたり膝や腰が悲鳴を上げた。特に半月板を損傷した膝は正座できないほどの痛み。稽古はおろか日常生活もままならない。

 「こんな状態なら受けてもだめかも」。直前まで迷ったが、今年は「令和」の始まり、そして同高創立80周年という節目の年。「ここで取れたらかっこいいな」。前向きに、気持ちを切り替えたことが奏功した。

 八段の証書を手に「稽古相手になってくれた教え子たち、学生時代の恩師には感謝しかない」と頬を緩める。「打っても打たれても次につながるのが剣道。修行は一生かけても終わりがない。その魅力を後進に伝えていきたいね」。昇段の記念に作った手ぬぐいには「身心一如」の文字。この言葉を胸に、これからも飽くなき求道心で竹刀を振り続けるつもりだ。 (鬼塚淳乃介)

 ▼メモ 日田市剣道連盟は一般向けの稽古を毎週行っている。月、水、金曜午後6時半~同9時、同市田島の市総合体育館武道場。ほかにも少年剣道の6団体がそれぞれ市内の小中学校で稽古を行っている。市剣道連盟事務局(武道河北)=0973(28)5728。

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