適切療法で社会復帰可能 脱薬物依存 北九州ダルク施設長に聞く

西日本新聞 北九州版 山下 航

生きづらさ…普通の人が使用

 芸能人や教諭が覚醒剤などの薬物を所持したなどとして逮捕される事件が相次いでいる。犯罪対象の薬物や向精神薬は依存性が強く禁断症状も激しいことから、離脱は難しいとの印象があるが、回復を支援するNPO法人「北九州DARC(ダルク)」(小倉北区)の堀井宏和施設長(46)は「適切な回復プログラムを実行すれば社会復帰は可能」と強調する。薬物依存の実情や活動内容などを聞いた。

 -元タレントの田代まさし容疑者が覚醒剤を使用した疑いなどで逮捕された。過去に使用で実刑判決を受けたが、近年は回復支援の講演活動をするなど離脱できていると見ていた人も多かったと思うが、どうか。

 「薬物依存は病気でもあり簡単にはやめられない。快感が脳に刻まれて、すぐに欲求が止まる方がまれで今回の逮捕に驚きはない。薬物乱用は犯罪とされているが、私たちダルクは病気と位置づけており、再び回復に向けて地道に頑張ってほしいと考えている」

 -女優の沢尻エリカ容疑者は合成麻薬MDMAを所持したとして逮捕された。

 「MDMAは北九州でも流行した時期がある。安価なため手に入れやすい。興奮作用が得られるが、それは決して(効用が)ソフトではないようだ」

 -県内では11月、中学教諭が覚醒剤所持容疑で逮捕された。

 「薬物に手を染めるのは怖い人だけ、というイメージがあるが実態は違う。社会的地位がある人もいる」

 -薬物依存に関してよく聞かれる偏見は。

 「『だらしない人が手を出す』といったイメージが強く、病気という認識は持ってもらいにくい」

 「もちろん犯罪対象の薬物は使うべきではないが、依存には人間関係や環境などさまざまな要因が関係している。依存者の多くに共通するのは生きづらさを感じているということ。薬物を使うことで苦しみを忘れられるから習慣化してしまう」

 -ダルクにはどんな施設があり、どのような薬物依存者を受け入れているのか。

 「通所型のデイケアセンターと、共同生活を送るグループホームを設けている。覚醒剤依存の人が一番多いが、精神安定剤や睡眠薬がやめられない人もいる」

 -ダルクの回復プログラムの内容は。

 「中心はグループミーティング。集団精神療法とも言われ、毎回違うテーマを決めて体験を語り合う。依存者は薬物をやめられないことへの罪悪感があり、それを和らげるためにまた使うという悪循環に陥りがちだ。同じ仲間の体験を聞くことで、薬物がやめられないのは自分だけではないことが分かり、罪悪感よりも安心感を抱くようになる。言語化しにくい心のもやもやを整理でき、『どのようなときに薬物を使いたくなるのか』といった自己理解も深まる。そうすることで薬物を求めない状況に自分を置くようにしていく」

 -ダルクは昨年、グループホーム移転を計画したが地元住民の反発を受け撤回した。

 「説明会を開いても溝を埋められず、諦めざるを得なかった。私が知る限り、近隣トラブルは起こったことがない。そもそもダルクには薬物をやめたいという意思のある人たちが集まってくる」

 -社会に求めたいことは。

 「活動を理解して応援してくれる企業主などもいて大きな支えになっている。活動に共感できないという人にはぜひとも、依存者も普通の人間ということをまずは認識してほしい」

課題は再犯防止 大麻摘発が急増

 覚醒剤などの薬物事件は再犯防止が課題となっている。近年は大麻事件の摘発が急増し、行政も対策に乗り出している。

 犯罪白書によると、2017年に覚せい剤取締法違反容疑で摘発された約1万人のうち再犯者の割合は66%。摘発者数全体は減少傾向にあるが、再犯者の割合は増加の傾向にある。

 警察庁のまとめなどによると18年の大麻事件摘発者数は3578人で前年より570人増加。県内でも202人で過去最多を更新した。有害性が低いとの認識が広まっていることなどが背景にあり若年層の増加が目立つという。

 県は昨年度から、執行猶予の付いた初犯者に医療機関などを紹介し、再び手を染めることを防ぐ事業に取り組んでいる。大麻乱用については若者向け動画広告を配信するなど啓発に力を入れている。 (山下航)

福岡県の天気予報

PR

福岡 アクセスランキング

PR

注目のテーマ