催涙弾で健康被害か、訴え相次ぐ 香港デモ鎮圧に1万発超

西日本新聞 国際面 川原田 健雄

「子どもに発疹」相次ぐ

 政府への抗議活動が続く香港で、警察が大量に発射した催涙弾が周辺住民の健康に悪影響を与えるのでないかと懸念が高まっている。香港メディアによると、6月以降、警察はデモ隊鎮圧のため1万発以上の催涙弾を発射。毒性が高いとされる中国製も多数使用した。会員制交流サイト(SNS)には催涙弾の影響が疑われる健康被害の訴えが相次いでいる。

 「手足に赤い発疹が出たと思ったら、すぐ全身に広がった。発疹がないのは足の裏だけだった」。香港北部、新界地区のベッドタウンに住む女性(38)は長男(9)の症状を訴えた。

 体調に異変が起きたのは11月12日。その2日前から連日、警察が近くの大通りで大量の催涙弾を発射し、一時は周辺が白煙に包まれた。強い刺激臭が漂う通学路を歩いて登校した長男は大量の発疹が出て早退。以降、かゆみと痛みで夜も眠れなくなったという。病院で「アレルギー性の発疹」と診断され、医師から「催涙ガスの影響かもしれない」と伝えられた。服薬しながら外出を避け、数日後にようやく症状が治まった。

 因果関係は不明だが、SNSには「催涙弾が使われた公園で遊んだ後、子どもに発疹が出た」など催涙弾との関連を疑わせる症状が相次いで投稿されている。

 香港メディアは、警察とデモ隊の衝突が相次いだ香港中文大や香港理工大周辺でスズメの死骸が多数見つかったと報道。デモの前線で長期間取材を続けた記者がダイオキシン類の過剰摂取で皮膚病を発症したとも報じられた。

 香港警察は当初、英国製などの催涙弾を使ってきたが、デモの長期化で在庫がなくなり、中国製に切り替えた。燃焼温度が高い中国製はダイオキシン類が発生しやすいとの指摘もある。警察幹部は「合法的な使用だ。国際的な基準にも適合している」と主張するが、詳細な化学成分は明らかにしていない。

 民主派の立法会議員、陳志全氏は「成分を明らかにすると、警官が自身の被害を嫌がり催涙弾を使いたがらなくなるからではないか」と指摘。「催涙弾は本来、集団を散らすのが目的だが、今は警官が不満解消のため無制限に撃っている」と乱用の実態を批判する。

 香港政府は催涙弾の影響で不快感が続いた場合は医療機関を受診するよう呼び掛けているが、抜本的な対策は示していない。ガスは空調などを通じて建物内に入るため、病院や老人ホームでも被害が懸念される。

 市民の間では、化学成分を洗い流す生理食塩水やマスクを持ち歩くなど自衛策が広がる。地図上に過去の催涙弾の使用状況を示すサイトも登場。有害物質が残る場所を避けて通るよう促す目的だ。長男に発疹が出た女性は「住宅地近くで催涙弾を発射するのがおかしい。すぐに使用を停止すべきだ」と訴えた。

(香港で川原田健雄)

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