筑後から世界へ挑む(3)逆境、品質と自信支えに 寝具メーカー梯社長

西日本新聞 筑後版 糸山 信

 次々に耳に届くのは来店者の厳しい言葉だった。

 「デザインがやぼったい。好みじゃない」「日本とは気候が全く違う。寝具は合わないのでは」

 パリの中心、ルーブル美術館から約600メートルの一等地。フランス語で「和の家」を意味するショールーム「メゾン・ワ」で、うきは市吉井町新治の寝具メーカー「龍宮」社長、梯恒三さん(62)は打ちのめされた。

 ルームは日本の中小企業が作る「クールジャパン商品」の販路開拓を支援しようと、国主導で開設。龍宮は全国から31品、九州からは7品という狭き門をくぐり抜け、2016年から主力素材「パシーマ」の寝具を断続的に出品していた。

 折からの「メード・イン・ジャパン」人気、訪日外国人増の流れ。おのずと高まる期待を胸に、初めて現地を訪れた18年11月、直面した客の反応は極めて冷たかった。「実際に手に取ってももらえないから商品の良さも伝わらない。もどかしかったし悔しかった」

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 品質には絶対の自信を持っていた。龍宮は梯さんの父礼一郎さんが1947年、亀王製綿所として創業。戦後の品不足を背景に、古いふとんからわたを取り出して糸を紡ぐ技術を生み出して成功した。

 脱脂綿をガーゼではさんだ3層構造の独自素材「パシーマ」は、高い吸水性や保湿性、保温性が特長。洗濯を重ねても綿が乱れず、ほこりが出ないのが特徴だ。繊維製品の国際安全基準「エコテックス規格100」で最高水準の安全性も認められ、特に肌の弱い乳幼児や、アレルギー性皮膚炎で悩む人を救う健康寝具として関心を集めた。

 梯さんはさらに独自の手法も導入した。製造段階で関わった社員を記録する「トレーサビリティー」で、商品の信頼向上につなげた。従業員40人の大きいとはいえない会社に、全国から感謝の声が寄せられる。「アレルギー症状が改善された」「今度生まれる孫にも贈りたい」。応接室の一面を埋める手紙の一つ一つが自信の源だった。

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 海外で直面した壁。だが柔らかな物腰ながらも梯さんは力を込める。「打開策はまだ見えない。でも今が自分にとっても会社にとっても成長できるチャンス」

 年明け早々に大きな勝負に出る。来年1月17日から5日間、パリで開かれる「メゾン・エ・オブジェ」。インテリア業界の「パリコレ」とされる世界最高峰の見本市だ。欧州を中心に世界中からトップバイヤーが集まる舞台に、単独ブースでの参加が決まっている。

 乳児用など10品目ほどの品ぞろえで挑むが、関心を持ってもらえるかは売り込み方次第。梯さんは社員ら4人と現地に張り付く。「とにかく手に取ってもらう。そうすれば素材の良さはわかってもらえる。揺るがないのは品質への自信と信頼。その点だけは万国共通で認められると信じている」。異文化への参入を目指す挑戦はまだ始まったばかりだ。

 (糸山信)

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