筑後から世界へ挑む(4)原点は父の“放り出し” 柳川高古賀理事長

西日本新聞 筑後版 森 竜太郎

 父に“放り出された”高校1年の夏が原点だった。

 2016年にタイ付属中を開設するなど新たな国際化教育に挑戦する柳川高(柳川市)。その先頭に立つのが学校法人柳商学園の古賀賢理事長兼校長(51)だ。父の前理事長、通生(みちたか)さん=16年死去=は、全国高校総体男子テニスで、1967年から14連覇を成し遂げた同校の熱血監督でもある。その影響で自らも中学時代はテニスに明け暮れた。全国中学選手権のシングルスを制し、プロ選手を夢見てもいた。

 「英国のウィンブルドンを見に行かないか」。通生さんに誘われ訪れたテニス四大大会最高峰の地。目の前で躍動するジョン・マッケンローら有名選手たち。感動の余韻に浸る古賀少年に父はこう言い放つ。

 「このままパブリックスクールの編入面接を受けろ」。有無を言わさず、父は一人で帰国してしまった。

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 面接や編入の手はずは既に整えられていた。とはいえ、その高校に日本人は自分一人。言葉の壁とともに人種差別にも苦しんだ。無視や陰口は日常茶飯事。「寂しい」とは書かなかったが、母親への手紙の文字を涙でぬれたようにわざとにじませたこともある。それでも耐え抜いて国立ロンドン大まで卒業。柳川高に発足したばかりの国際科の科長として27歳で帰郷した。

 「外国人として生きることの難しさが骨の髄まで染みた。多様な国の友人と学ぶことは、日本人の生徒にとっても国際社会で働く時代に必ずプラスになる」

 国際科は当初、日本人生徒の留学支援が主だったが、積極的に留学生を受け入れる方向にかじを切る。本年度の留学生は3学年で計80人。2022年度をめどに、1学年当たり100人を受け入れる「グローバル学園構想」を掲げる。

 タイ付属中は日本の学校法人として初めて、現地生徒を対象にした学校開設となり、今春、第1期卒業生4人が柳川高に入学した。留学の窓口となる海外事務所は東南アジアや英国など8カ国にある。

 「これからの高校には地方に人を呼び込み、活性化させる役割も求められる」

 地方から世界へ、世界から地方へ。取り組みは少子化による生徒数減少の歯止め策にとどまらない。

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 「日本一、世界一を常に目指せ」が口癖。「大人が夢を語らなければ、子どもたちの目は輝かない」。だから全校朝礼での校長あいさつが大好きだ。毎朝でも話したいが、我慢して月1回にしている。内容を熟考するのはもちろんだが、自身で決めた約束が三つある。「前日は飲みに行かない」「当日は5時起床、集中する」「新しいコンタクトを着ける」。コンタクトの新調は、生徒たちの目をしっかり見るためという。

 「この高校を必ず世界一魅力的な学校にする。生徒、教職員と一緒に航海する海賊船の船長のつもり」。これからも暑苦しいほどの夢を語りながら大海原を突き進む。(森竜太郎)

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