男性は“お試し育休”? 下崎 千加

西日本新聞 オピニオン面 下崎 千加

 「あそこ、男性の育児休業ゼロらしいよ」「えっ今どき?」と誰もが驚きの反応を示す大企業が福岡市にある。いや、正確には、あった。

 福岡銀行である。社員数約3700人。政府が「2020年までに取得率13%」を掲げ、義務化も話題になっているのに、と11月取材すると、今年48%に躍進したという。

 「取材を受けられる状況になってよかった」と安堵(あんど)の表情を浮かべる担当部長に詳しく聞いた。「男性が取る文化がなく、取得を言い出せない雰囲気がある。これでは若い人が離れてしまう」と今年2月、産後8週間以内に取った男性は最大10日を有給にする社内規定を作り、4月にトップがメッセージを出した。取得を促すため、人事部が対象者の所属長にメールするようにした結果、取得者が現れた。

 ただ問題は中身だ。法律では原則1年間取れるのに、取得した43人全員が1~6日の短期間。出産時の立ち会い、もしくは妻の入院中や退院直後にちょっと手助け、という程度で、ほとんど“お試し育休”だ。こうした休みは、これまでも年次有給休暇(年休)枠で取った社員がいたというから、育休枠に振り替えて数字を稼いだにすぎない。

 もちろん、ゼロよりはいい。部長は「まずは男性も育休を取れる、という意識改革を急いだ。今後は長期で取れる環境をつくりたい」と話す。

 大企業には社会に模範を示す責任がある。他の企業にも18年度の取得者数と取得率を聞いた。九州電力は2人で0・6%。毎年度、数人で期間は7日~1年。社独自の配偶者出産時休暇(最大5日)は18年度、7割が取ったというから、2人は“純粋な育休”かもしれない。TOTOは2人で取得率は非公表。西日本鉄道は10人で9%。半数が2~3カ月、残りは8カ月前後となかなかだ。ただ、取得率だけ比べると、西鉄より福銀の方が充実して見える。

 では、西日本新聞社はどうか。18年度ゼロ、17年度3人で14%、16年度4人で17%。期間は2週間~6カ月。「最近は年休枠で1カ月ほど取る社員が目立つ」と人事部。日頃は年休が消化できないほど多忙、育休枠だと収入が減る(給付金は6カ月まで給与の67%、6カ月を超えると50%)など別の問題も横たわる。

 政府によると取得率の全国平均は6%。約6割が5日未満の“お試し”であり、数字の向こう側に目を凝らさなければ、男性の育児参加の実態は見えてこない。

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 ▼しもさき・ちか 大阪府出身。1999年入社。筑豊総局、長崎総局、東京報道部、社会部などを経て、くらし文化部次長。

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