北九州の「花輪」なぜ大きい? 背景に職人の心意気

西日本新聞 北九州版 岩佐 遼介

 開店祝いなどで飾られるおなじみの「花輪」。北九州市で以前から気になっていたのが、街中に並ぶ背丈よりはるかに高い花輪の存在だ。これまで暮らした福岡市や名古屋市などでは、ここまで大きな花輪をここまで頻繁に見かけることなんてなかった。一体なぜ…。取材を進めると、北九州市の花輪職人の粋な心意気が浮かび上がった。

 11月中旬、同市小倉北区の繁華街にある雑居ビルには、スナックの開店14周年を祝う花輪が立て掛けられていた。階段部分も含めてその数11本。問題は花輪の高さが3メートル以上だということ。直径は約1メートル70センチにもなる。業界関係者によると、1メートル20センチ前後が一般的というので、かなり大きい。

 スナックの40代ママは「花輪は毎年恒例で、常連客が贈ってくれる。ここらじゃ日常的な光景よ。過去には花輪を置くスペースがなくて頭を抱えたこともあるんだから」という。

 「北九州では花輪の数が多くて大きい。他都市の業者さんにびっくりされることも多いんだよ」。創業60年以上の矢野造花店(同区)を訪ねると、2代目の矢野光弘さん(75)が教えてくれた。「(昔)地元の造花組合が花輪の大きさと値段の統一規格を定め、組合がなくなった現在でも受け継がれているからだ」

 矢野さんによると、40年ほど前、ある雑居ビルに花輪が並んだが、大きさがばらばらで見栄えが悪かった。そこで、20軒以上の造花店や葬儀店で構成する「北九州造花組合」が花輪の統一規格を設定したという。

 その際に値段は一律1本1万円に統一され、今も変わらない。他都市では、一回り小さいサイズで1本当たり1万数千円するといい、矢野さんは「値段とサイズが据え置かれた分だけ、北九州は他都市よりも花輪の需要があるのでは」と推測する。

 それでも、ビニールなどの材料費の高騰が造花店の経営を圧迫。後継者不足もあって、市内の店舗では廃業が相次いでいるという。

 バブル経済全盛期、月800本以上の花輪を受注していた矢野造花店も、現在は月80本程度。矢野さんは「値上げはお客さんが離れるかもしれない。花輪文化を続けるためにも値上げはできん」と語る。

 創業55年の京屋造花店(同市八幡西区)の渡辺公三さん(80)は「もうそろそろ店をたたもうと思っても、長年のお客さんから注文が入る」と、店に立ち続けている。

 北九州市を彩る大きな花輪があり続けるのは、根強い市民の支持と、それに応える花輪職人の心意気であると実感した。 (岩佐遼介)

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