米朝にじむいら立ち 非核化交渉、溝埋まらず

西日本新聞 国際面 田中 伸幸 池田 郷

 【ソウル池田郷、ワシントン田中伸幸】停滞する北朝鮮の非核化交渉を巡り米朝がさや当てを演じている。来年11月に大統領選を控えるトランプ米大統領は、金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長との良好な関係をアピールしているが、局面を打開する材料は乏しい。正恩氏は自身が設けた「年内」の交渉期限が過ぎれば、ウクライナ疑惑に揺れるトランプ氏の足元を見つつ、長距離弾道ミサイルの発射実験を再開するなど挑発の度合いを強めるとの見方もくすぶる。

 年末が迫り、北朝鮮の動きが慌ただしさを増した。11月に入って高官などが米韓合同軍事演習を強く非難する声明を相次いで出し、同28日には短距離弾道ミサイルとみられる飛翔(ひしょう)体2発を発射した。韓国の国家情報院は「年末の期限までさまざまな挑発が続くとみられ、強化される可能性もある」と警戒する。

 米朝首脳が昨年6月、史上初の会談に臨んでから約1年半。非核化の進め方や北朝鮮への経済制裁の緩和を巡る主張の溝は埋まらないままだ。今年2月の第2回首脳会談で、北朝鮮は寧辺(ニョンビョン)の核施設廃棄と引き換えに制裁の一部解除を要求したが、米側が認めず決裂。再開した10月の実務者協議も物別れに終わった。

 以降、北朝鮮側に焦りの色がにじむ。「米国に十分な時間と機会を与えた。今後、朝鮮半島で情勢が激化し緊張が高まれば、その全ての責任を米国が負わなければならない」。韓国メディアによると、北朝鮮の崔善姫(チェソンヒ)第1外務次官は11月下旬、訪問先のロシアで米国を強くけん制した。

 正恩氏は1月、施政方針に当たる新年の辞で「わが国に制裁と圧迫を続けるのなら、やむを得ず新しい道を模索せざるを得ない」と宣言している。米側の譲歩を待つという年内の期限が過ぎれば、強硬姿勢に転じるとの見方がある。

   *    *

 「戦争寸前だったが、北朝鮮は核やミサイル実験をやめた」。トランプ氏は大統領選を意識して、こんな発言を続けている。

 北朝鮮は非核化交渉に入ってから、米本土を射程に入れる長距離ミサイルの発射実験を自制しており、米国内の北朝鮮脅威論は沈静化。トランプ氏にすれば、大統領選まで交渉が進展しなくても、現状維持なら世論の批判は回避できるとの計算も働く。

 だが北朝鮮が核開発の再開を公言したり、長距離ミサイル発射実験に踏み切ったりすれば展開は異なる。政権奪還を狙う野党民主党が「独裁者に擦り寄ったトランプ外交の失敗」などと批判を強めるのは必至。政府関係者は「大統領が怒って追加制裁措置を命じるなど強硬姿勢に転じる可能性はある」と話す。

 トランプ氏が目先の成果にこだわるあまり、安易な妥協をしかねないとの懸念も根強い。北朝鮮が核施設を一部廃棄する見返りに大幅に制裁を緩和し、在韓米軍縮小にも応じれば「日米韓の連携に支障を来し、中国やロシアが影響力を増す最悪の事態になる」(6カ国協議米次席代表経験者)。

 当のトランプ氏は11月、ツイッターで正恩氏に「早く行動を起こして取引をまとめるべきだ」と呼び掛け、いら立ちをにじませた。

PR

国際 アクセスランキング

PR

注目のテーマ