「滑動崩落リスク」判定は手探り 熊本地震の宅地復旧事業が参考に

西日本新聞 くらし面 長谷川 彰

●造成地、優先順位付け調査 →危険度で場所選び対策工事

 郊外のニュータウンに多い大規模盛土(もりど)造成地。開発された時期が古い場所などでは、地震や豪雨で宅地が滑動(かつどう)崩落するリスクが指摘されている。来年度から全国で、地盤の危険度が高い場所を割り出す作業が始まる見通しだ。対策事業はどう進められるのか。

 国土交通省によると、全国の自治体は、大規模盛土造成地マップ(崩落のリスクがある盛り土部分の位置を示す地図)を公表する第1次スクリーニング作業を踏まえ、来年度から、安全性の確認を進める第2次スクリーニング作業に着手する予定だ。

 第2次の作業では、数ある造成地のうち、どこの地区から優先的に調査するか計画を立てる。

 福岡県の場合、都市計画課によると「一つ一つ点検しながら、ある程度ランク付けして分類し、急いだ方がよいと思われる場所から取り掛かる、といった方向で検討中」という。

 地盤工学関係者は、造成年代がより古い▽盛り土の厚みが大きい▽造成前の地形の傾斜が急だった▽現地調査で何らかの異常がうかがえる-などの場所を優先するのではないかとみる。

 ただ、既にマップが公表されている市の中には、細かく分けて数えれば市内に大小100カ所以上、盛り土による造成箇所が散在しているケースもある。

 「予算も人員も限られている上、前例のない取り組み。全国どこの自治体も、計画作りは手探りの状態ではないか」(同課)

 地域それぞれの事情を踏まえ、優先順位に沿った調査計画がまとまれば、安全性の確認作業、危険度の高い場所の選定、対策工事といった順に事業が進む。

   *    *

 その参考事例になりそうなのが、熊本地震被災地での宅地復旧事業だ。

 熊本市は、被災した主な造成宅地を緊急調査。擁壁や地盤などの亀裂や陥没・隆起、滑落・崩落など異常の度合いを踏まえ、避難や立ち入り禁止措置などが必要な「危険宅地」、経過観察する「要注意宅地」、防災上の問題は当面ない「調査済宅地」に分類。判定を踏まえ9地区で、本来は予防的に行う「宅地耐震化推進事業」を、国や県と協議して復旧に活用した。

 手順として、まず宅地のボーリング調査。盛り土部分の土質、地下水の水位などを確かめ対策工法を決めた。本年度中にすべての工事が終わる予定という。

 該当地の一つ、同市北区龍田のニュータウンは1980年代に開発された造成地。熊本地震時に震度6弱の揺れに襲われ、地割れや擁壁の亀裂が発生。避難指示や避難勧告が出された。

 ここでは多数の鉄筋を盛り土の底にある地山まで斜めに突き刺し、盛り土部が滑り動かないよう支える鉄筋挿入施設で対処した。

 状況によっては、くいを打ち込む工法や、擁壁と地山を引っ張り合って固定するグラウンドアンカー工法が採用される場合もある。

 同市の場合、今後こうした対策施設を適切に管理していくため、周辺でさまざまな工事を行う場合は事前に届け出て、対策施設に影響を及ぼさないよう罰則付きの禁止事項を定めるなど保全条例も整備した。

 市の震災宅地対策課は「これから取り組む大規模盛土造成地の安全確認や必要な対策事業は、基本的に今回と同様のやり方で進められる見込み」と説明。一方で「被害が出る前の予防対策となるので、住民の方々には、より丁寧な説明で理解を得ていく必要があるだろう」と話している。 (特別編集委員・長谷川彰)

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