アナログあってのデジタル 竹下尚紀さん 連載・科捜研のリアル❹

西日本新聞

 Q 今は技術が進歩しているから、映像が一つあれば事件や事故はすぐに解決しそう。実際そうなの?

 福岡県警科学捜査研究所(科捜研)の物理科のベテラン竹下尚紀さん(48)は「あなたの特命取材班」の通信員の質問を聞いた後、少し考え、一つの事故について語り始めた―。

 ◆「被害者のために」

 福岡県内の交差点で、雨の日に女性の自転車が横断していたところ、右折するタクシーと衝突した。運転手は「横断歩道ではない所で女性が飛び出してきた」と主張した。タクシーにはドライブレコーダーがあった。しかし、雨のため映像は暗く、フロントガラスの油膜の影響もあり不鮮明だった。倒れる様子は確認できたが、女性が主張する横断歩道上なのかは分からなかった。

 物理科は交通事故や火災現場の調査などを担う部署。防犯カメラなどの映像や音声を鮮明にし、解析する。

 晴れた日、竹下さんは刑事と一緒に現場に向かった。事故時と比較する再現映像を撮影するためだ。同じ車で、実際に同じコースを走り、ドライブレコーダーで録画した。車の軌道を調整しながら撮影するのは簡単ではない。何度も映像を撮り直した。

 研究所に戻り、ようやく撮れた再現映像を、細心の注意を払い、事故時のものとコンピューター上で重ね合わせた。雨天時にはかろうじて見えた背景のマンションに狙いを定め、晴天時の映像でも、同じ建物が同様の角度、位置に映っている場面を見つけた。映像を重ね、女性が倒れたのは横断歩道上と分かった。

 竹下さんは鑑定人として裁判に出廷し証言した。その後、運転手には罰金刑が言い渡されたという。「正確な鑑定で真実にたどり着くことで被害者のためになった」と振り返る。

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